トランプ大統領にとっての試金石
上記の2つの問題、すなわち、(1)米国は非核化プロセスが完了する段階で、中国との戦略的競合関係で強い立場を構築することができるかどうか、(2)中国が対北朝鮮制裁の解除を追求していく中で、米韓合同軍事演習なしに、米国が中国に効果的なテコを行使することができるかどうか―こうした問題に米国がどう対応するかは、結局のところトランプ大統領の判断にかかっている。同大統領は国内政治上の動機と、北朝鮮の非核化および中国との戦略的競合を巡る判断との折り合いをつけなければならない。目下の米朝間の話し合いは、中間選挙がある年に進められており、マイク・ポンペオ国務長官はトランプ政権1期目が終わるまでに非核化を完了したいと述べている。(その後ポンペオ氏は、交渉に特定の期限は設けないと述べたが、非核化そのものの目標期限まで延期しているかどうかは定かではない。)
「完全な非核化」をもたらす非核化のロードマップと査察体制に関する交渉は、トランプ大統領を試すことになる。もし、政治的な思惑を優先させる戦術を選べば、2020年に非核化の完了を何らかの形で発表し、自らの支持層に対して、「米国第一」アプローチは朝鮮半島に平和をもたらしたと表面的にはアピールするであろう。その場合、制裁解除と関係正常化への道が開かれ、北朝鮮の非核化問題は「終わったこと」とされ、この問題を巡る米中関係は安定に向かうように見えるだろう。しかし、この場合、査察に応じようという北朝鮮のインセンティブが低下し、場合によっては再び危機を引き起こす可能性もある。
他方、トランプ大統領が本来の立場を堅持し、厳格な査察体制を伴う具体的で実効的な非核化ロードマップを求めれば、米政府は北朝鮮と中国に圧力を掛けて、米国と同盟諸国にとって受け入れ可能な条件を飲ませることになり、北朝鮮問題を巡る米中関係は軋轢(あつれき)に満ちたものとなろう。
前者のシナリオは、早期の「解決」を可能とするかもしれないが、依然として不十分で危なっかしい状況をもたらすことになるだろう。一方、後者のシナリオは、新たな解決の枠組みを生み出すのに長い期間を要することになるので、忍耐が必要になる。トランプ大統領が今後数カ月、数年のうちに下す選択は、このように北東アジアの国際政治バランスが将来どういう形になるかに根本的影響を与えるだろう。北朝鮮の非核化問題に関するいかなる解決策も、将来的な危機の再発を防止し、中国との地政学的競争に備えられるような、北東アジアに対する米国の長期的な関与戦略の中で策定されるべきである。
(原文英語で、2018年6月29日にnippon.com英語版に公開。バナー写真:北京の人民大会堂で握手する北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長(左)と習近平・中国国家主席=2018年6月19日(AFP/アフロ))
