店舗は日本統治時代の台湾、そして台南を意識

想像していたより、だいぶ地味な外観だ。京都の町屋造りの建物は、外からでは中の様子がよく分からない。ガラスがはめ込まれた茶色の引き戸を開けると、土間にレジが置かれ、座敷が奥へと続く。

中には、古書や骨董(こっとう)品、ブリキのおもちゃなど、いろいろなものが並べられている。台湾でリノベーションされた古民家カフェの雰囲気と実によく似ている。

撮影:今井 さき

「日本統治時代の台湾を意識しました。台湾風の町屋造りに見えませんか」

店主で今年53歳になる平岡尚樹さんが現れ、誇らしげに語った。丸顔に黒縁の眼鏡。ちょっとコロンとして、見るからに優しそうな雰囲気がする。

渡されたメニューには、粽子(台湾チマキ)、皮蛋豆腐(ピータン豆腐)などの定番料理だけではなく、麻油麵線や鹽酥雞(鶏の唐揚げ)、蚵仔煎(カキのオムレツ)など、あまり日本では見かけない本格的な台湾の小吃(小皿料理)がずらりと並んでいる。棺材板(台湾式クリームシチュートースト)、蝦仁飯(エビご飯)、割包(台湾バーガー)のような台南の名物もあるので驚いた。

私の目線はすっかりメニューにくぎ付けだ。

「まずは注文から受けましょうか」

平岡店長が微笑えんだ。

悩んだ末、好物の大根もち、蝦仁飯、台南羊肉湯(台南羊スープ)、麺線、オススメの小菜(前菜盛り合わせ)を頼むことにした。

次々と運ばれてくる料理のどれにも、食欲をそそる台湾の香りが立ち込めている。私は麺線、友人は蝦仁飯を口に入れ、にっこりと「台湾の味だ」と微笑み合った。