日本語への変換が誤解を招いた出来事
出来事は、そんな「回復正名運動」の流れの上で起こった。
内閣の新しいスポークスパーソンとして任命されたアミス(パンツァハ)族出身のKolas Yotaka氏が、伝統的な先住民名を、従来の漢字の当て字ではなくローマ字表記することに理解を求めた。すると、Kolas氏の「Yotaka」がグーグル翻訳で日本語の「夜鷹」と変換された。その意味が日本語の「遊女(私娼)」であるという内容の投稿が台湾のSNSで出回り、Kolas氏関連のニュース記事や当人のフェイスブックに、名前にまつわる誹謗(ひぼう)中傷が次々と書き込まれた。
Kolas氏本人は以前のインタビューで、「Yotaka」という名前は彼女の祖父が日本統治時代に付けた「豊(ゆたか/日本語のローマ表記では”Yutaka”)」という名前を引き継いだものだ、と説明している。
しかし、これを受けてネットの論調はさらに過激になり「豊のローマ字表記はYutakaでありYotakaではない、日本人は台湾先住民族に対して『娼婦』という名前を付けてひどい支配をした」など、日本人に対して悪意のある見方も出現した。
歴史的にみれば、これまで先住民族のアイデンティティーを奪ってきた当事者として、日本人も含まれるのは確かだし、日本が台湾を領土とした事に関連して多くの先住民族の方々が命を落とし、差別されたことは事実だ。現在の台湾で進んでいる「移行期の正義」の延長として、日本人もきちんと向き合うべき問題であるに違いない。
しかし、これまで見聞きしてきた先住民族に関する研究や聞き書きに照らしても、日本人が先住民族の方に対して悪意を持って「遊女」、もしくはそれに類する名前を付けたような前例は聞かない(もし似たような例があれば、ご一報いただきたい)。さらに言えば、ここで問題となっている「夜鷹」が「遊女」であるという認識自体、日本でも一般的と言えず、現代では死語に等しい。グーグル翻訳の変換機能に大きな偏りがあると言わざるを得ない。