周囲を魅了したレスリー・チャンのカリスマ性
1990年代初頭は、日本でも香港スターの人気は高かった。それは何より、香港映画が面白かったからだ。ウォン・カーワイ(王家衛)監督の一連の作品、中でも「恋する惑星」(94年)からはフェイ・ウォン(王菲)が、今日も俳優として活躍する金城武とともにブレイクし、プレイステーション用ゲームソフト「ファイナルファンタジーVIII」の主題歌「Eyes On Me」は日本で50万枚を売った。日本武道館でライブをし、日本のドラマにも主演した。
カンヌ映画祭でグランプリを取った映画「さらばわが愛、覇王別姫」に主演したレスリー・チャン(張國榮)は、日本で最もファンが多かった香港のスターといえる。2014年に亡くなったが、過去に5回、大きなホールでコンサートをしている。
レスリーとの思い出も忘れられない。おそらく日本のメディアとしては最後にインタビューしたのが私ではないかと思う。
そのインタビューは香港で私が泊まっている尖沙咀のホリデイ・インで行われた。ホテルのスタッフには事前に言った。「レスリーのインタビューをします」と。いらしたことのある方はお分かりになるだろう。ホリデイ・インの車寄せはいつも車がぎっしり停まっている。が、インタビュー当日は車がない。レスリーの黒い車が静かにそこに入ってきた。いつもは人でごった返してしているロビーも心なしか人が少ない。よく見ると、セキュリティが立ってくれている。そして、レスリーは、車を降りて、私の所までまっすぐに歩いて、握手の手を差し出した。呼んでくれてありがとう。満面の笑顔、そして一緒に歩きだしたレスリーは、凜(りん)としていて、美しく光輝いていた。映画を見ているようだった。スターとはそういうものなのだと感じた。
インタビューでは、とても気分がいいから一緒に食事をしよう、とレスリーから言われた。ホテルのプレジデンシャルスイートルームで中華料理をオーダーした。大きな丸いテーブルを囲むわれわれ。レスリーは一人一人に気を配る。冗談を言って常に和ませる。最後に彼は「そろそろ出る。最後にたばこを1本吸う。吸う人は一緒に吸おう」と話した。たばこを吸いながら笑顔で皆を見回すレスリーの顔はやっぱりスターで、私たちは忘れられない時間をもらった。