ラフなライフスタイルの裏には洗練された都会的な感性がある

最後に、沖縄楽器の三線を台湾各地で演奏する一人のアーティストとして筆者が台南を愛する一番の理由を一言で表すなら「自然体の生活」である。不必要に気取ったり、力んだりすることなく、簡潔さと実用性と心地よさを何より重んじるのが、台南人の基本的な生活態度だ。

年齢を問わず、かなりの割合の女性が化粧をせず、バイクに乗る事が多いせいかヘアスタイルもあまり気にかけない。スーツを着ている人はめったに見かけず、役所の職員さえTシャツにジーパンだ。路地裏や公園に椅子を並べて日がな一日おしゃべりしたり象棋(中国将棋)を指したりしているおじいさんたちのリラックスぶりも相当なものだ。肌が透けて見える薄手の白い半袖シャツにゆったりした半ズボンが昔ながらのスタイルで、椅子に片足をのせていると睾丸が丸見えだったりする。

この点において台南は、台北や高雄などの都市と、はっきり一線を画している。台北の女性は、日本ほどではないけれども一般に化粧をしているし、台南では年中沖縄のかりゆしウェアと花柄ビーチパンツにサンダルという格好の筆者でも、同じ身なりで台北のデパートに入るのには抵抗がある。

こういうラフなスタイルは台南が田舎だからできる、と考えるのは誤りだ。台南は、今でこそ一地方都市だが、台北とは比較にならないほど長い年月、台湾の政治と経済の中心地であり、国際都市であった。オランダを始めとするヨーロッパ諸国や中国大陸、日本などと入れ替わり接触を持ち、文化的な層の厚さが台湾各都市の中で群を抜いている。

地元の人々は、台南人であることに強い誇りと自信を持っている。それ故に、自分を無理して飾り立てる必要がない。機能性と心地よさが、常に形式より優先される。私の結婚式にも短パンとサンダルで出席するような人たちがいたが、それが許されるのは、この町の人々が成熟し洗練された都会的感性を持っているからだと、筆者は思う。

『遊步台南』では台南の歴史や飲食文化と共に、現代の日本人にとっても学ぶべき点が多々ありそうな台南式ライフスタイルを紹介している。

台南「赤崁楼」(筆者撮影)
台南「赤崁楼」(筆者撮影)

バナー写真=魏徳聖さんと筆者、台南駅トイレの前で(筆者提供)