「民意無視の香港行政長官」
当時、立法会の外は黒山の人だかりで、ほとんどが10代から30代の顔つきに思えた。若い世代の将来に対する憂慮は、香港社会の目下、最大の課題である。若者の不満は逃亡犯条例改正案をきっかけに、香港の法治への脅威を訴える「反送中運動」を引き起こし、6月9日には100万人の抗議デモが行われた。12日に警察は、ビーンバッグ弾、ゴム弾、催涙ガスによって、抗議する若者を強制的に排除した。16日の香港では、さらに参加人数が倍増して200万人のデモが行われ、香港市民の怒りは頂点に達していた。
しかし、このような怒りに対しても、キャリー・ラム行政長官は特別な反応を示さなかった。彼女は最初から、改正案を可決させるべく強硬姿勢を示した。12日になってから警察の強制排除が国際的な批判を受けるようになり、彼女はようやく改正案の「先送り」を表明し、不満を持つ香港市民に謝罪した。
中学3年生で15歳の女子生徒、林さんは7月1日、筆者に「私たちはラム長官の態度にとても不満です。彼女は何も説明せず、謝罪にも誠意がありませんでした。受け入れられません」と語った。もう一人の中学3年生の女子生徒の文さんは「ラム長官は一貫して、私たちの抗議を無視しました。100万、200万の人が街に出ても、無視しました。謝罪もいい加減な態度だった。それに比べて、彼女は長官に当選した直後、自分に投票した立法会議員には深々と頭を下げて最敬礼のお辞儀をしたのです」と述べた。
キャリー・ラム長官がこれまで若者の心の声に耳を傾けてこなかったことに、多くの若者は大変な不満を持っている。16歳の男子生徒の黄さんは「私たちは、この(香港)政府は中国共産党の指示に完全に従うと感じています。完全にコントロールされている。つまり、傀儡(かいらい)政権です。基本的には、誰が行政長官になっても同じです」と述べた。立法会に突入したことについて、黄さんは「絶対に、感情的にも道理的にも正しい」と考えており、それはキャリー・ラム長官が香港の民意を根本的に無視しているからだという。
16歳の王さんは6月12日、増員された警察が抗議する若者を強制排除する様子をテレビで見ていた。警察の行動は全く理にかなっていないと思った。さらに、キャリー・ラム長官は民意に応えておらず、「行政長官として不合格だ」と述べた。2017年に就任して以来、キャリー・ラム長官は女性長官というイメージに頼って温かく思いやりのあるイメージを作ろうとしたが、ここに至って完全な失敗に終わったという。
「香港人はすでに、長い間我慢してきた」。香港のある新聞のベテラン記者はまず、こう嘆いた。続けて筆者に対して、「買単(マイダン)という言葉を知っていますか」と尋ねてきた。「買単」とは、普通ならば店などで会計をすることだ。ただし、香港の裏社会では「落とし前を付けさせる」という意味の隠語としても使われる。誰かに“落とし前”を付けさせることを「あいつに“買単”させる」というように使う。
2014年の雨傘運動(セントラル占拠運動)から現在まで、香港の若者は5年間、我慢してきた。すでに臨界点に達していたのだ。そしてついに7月1日に立法会に突入し、キャリー・ラム長官に「落とし前」を付けさせようとしたわけだ。その記者によると、「キャリー・ラムよ、あなたのまいた種だ。落とし前を付けてもらおう」ということになる。
