おいしいジャパニーズ・ウイスキーの選び方
アッシュクラフト氏が、ジャパニーズ・ウイスキーに関する本を書こうと思ったきっかけの一つは、自身が大阪に住んでいるからだ。大阪は、鳥井信治郎氏(1879-1962)がサントリーを創設し、日本初の商用ウイスキー蒸留所として開設した山崎蒸留所がある場所だ。彼はウイスキーをコレクションとして集めない。彼にとってウイスキーは飲むものだからだ。リサーチの一環として日本中の蒸留所を訪れ、おいしいウイスキーを探し求めているうちに、年数表記が無くて、目が飛び出るような値段でないウイスキーでも楽しめることを知り、その極意を広めたいと思ったのだ。お勧めは、『響ジャパニーズ ハーモニー』『余市シングルモルト』『キリン富士山麓』『ホワイトオークあかしシングルモルト』、そして『イチローズ モルト モルト&グレーンワールドブレンデッドウイスキー』だ。
同書には、ウイスキー・ブロガーの川崎氏がこれまでに書きとどめた100種を超えるテイスティング・ノートも含まれている。彼は単に香りを評価するだけでなく、豊かな語彙(ごい)と独特の表現力で各銘柄の個性を描き出している。例えばニッカの『宮城峡12年シングルモルト』は「景色の良い日本の田舎道からトンネルに入ったときに感じるひんやり感」、希少な本坊(ほんぼう)酒造の『ザ・モルト オブ カゴシマ迷蝶(めいちょう)マルス ウイスキー』は「下ろしたての子牛皮の手袋」に例えている。
「『履き慣れたジーンズのようなウイスキーだ』と言ったら、ウイスキーを飲んだことがない人でも試してみようと思うでしょう?」と川崎氏は言う。彼がブログを始めたのは、より多くの人に魅力を知ってもらいたかったからだ。「お気に入りのウイスキーは?と聞かれて真っ先に挙げるのは『響』ですね。日本人にも海外の方にもお薦めです。とても繊細な味わいで、日当たりの良いティールームでオーケストラの演奏を堪能している気分になれます」
ジャパニーズ・ウイスキーの今後
供給量が限られてきているとはいえ、2人は日本のウイスキーの将来について楽観的だ。現在サントリーは、山梨県北杜市白州町にある白州蒸留所の貯蔵容量の拡大と滋賀県東近江市の近江エージングセラーの貯蔵庫増設を進めている。またベンチャーウイスキーや本坊酒造のような新規小規模メーカーも、ジャパニーズ・ウイスキーの供給不足解消に一翼を担うだろうと期待されている。
「もともと生産量が少なかった製品が、突然世界中の注目を集めたことが供給不足の原因です」とアッシュクラフト氏は説明する。「サントリーなどのメーカーは生産・貯蔵容量拡大への投資を増やしていますが、増産すれば問題が解決するわけではありません。十分な時間と木材が必要です。根比べのようですが、供給量が限られているという問題には良い側面もあります。各メーカーが、限られた在庫をうまく調合する能力を磨いているからです。例えば、年代表記の無い『余市シングルモルト』はどんどん味が良くなっています。各メーカーの能力を見極めるという点では、品不足も悪いことではないかもしれませんね」
(原文英語)
バナー写真:サントリー山崎蒸留所(大阪府島本町)に並べられたウイスキー カスク(樽)
撮影=上田 出日児

