3作目『PLAY』は人生をやり直す物語

しかしこの「失敗」から立ち直るには、長い時間を要したという。

「不思議なことにその後、より多くのオファーが来ました。何でもやってくれそうなイメージを与えてしまったんですね。それらをみんな断って、今度こそ自分の中から生まれてくる物語を書こうと、じっくり取り組みました。なかなか進まずに2年半くらい経ったある時、ふと『PLAY』のアイディアを思いついたんです。そこからはあっという間に進みました。何を伝えたいか、どう語ったらよいか、自分で完璧に分かったんです」

マルシアーノ自身、自分のビデオカメラで何から何まで撮る少年だったし、劇中のさまざまなエピソードはブーブリルの実体験に負うものが多いという。2人で話し合いながら、自分たちの悪ガキ時代のいたずらや、意中の女の子をなかなかデートに誘えなかった思い出などを、ストーリーに盛り込んでいった。

マルシアーノ監督の盟友マックス・ブーブリル ©2018 CHAPTER 2 - MOONSHAKER II - MARS FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - CHEZ WAM - LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER / PHOTOS THIBALUT GRABHERR
マルシアーノ監督の盟友マックス・ブーブリル ©2018 CHAPTER 2 - MOONSHAKER II - MARS FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - CHEZ WAM - LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER / PHOTOS THIBALUT GRABHERR

「自分たちが若いときに体験したことをスクリーンに映し、もう一度この目で見たいという欲求でワクワクしながら作業を進めました。一気に18歳に戻れて愉快な気分でしたよ。その反面、現実に戻ると、もう40歳なのかという感傷も、もちろんありました。でも同時に、この主人公の気持ちになって、希望も見出せたんです。40歳になってもまだ時間はある。その時その時を楽しんで、大切に過ごさなきゃいけないなって」

自分の信念に従って生きていこうという思いは、この3作目を撮り終えて、あらためて強く感じたことでもあるという。

「40代に入った今も、人生の行方はまだ何も決まっていないと思っています。その時々の行動によって決めていけると。そうするために必要なのは、勇気をもつこと、自分が欲するものを信じることです。僕は、これまでの人生でいくつかの仕事をしながらも、何か書かなくてはいけないと常に思ってきました。それである時、ほかのことをすべてやめ、書くことに集中してみた。それが今、こうして自分の新しい仕事になっているんです」

物語が展開する25年の間には、2001年にニューヨークで、2015年にパリで起きた同時多発テロの衝撃もあった。これらの場面も撮影したが、全体の明るいトーンにそぐわず、編集でカットしたという。そしてもちろん撮影当時、新型コロナウイルスで世界が一変することなど思いもよらなかった。マルシアーノ監督は、人々が元気を失った今こそ、この映画を観て希望を感じてほしいと話す。

「コミュニケーションがバーチャルな方法になって、人々が危険な形で二極化していますね。このほうがウイルスよりもずっと恐ろしいと感じます。でも僕は、この映画に描かれたようなコロナ以前の日常がまた戻ってくると信じています。今、僕たちは本当にむずかしい状況を生きていますが、家族や友だちとの絆、恋愛の力を感じながら、物事をポジティブに見ることが大事です。登場人物たちのように、ユーモアを暗い気分から抜け出す武器にしたいですね。人生は過ぎ去ってみないと分からないことだらけです。たとえ何かをやり損なったとしても、もう一度やり直してみよう、そんな希望が持てる映画になったと思います」

取材・文=松本 卓也(ニッポンドットコム)

©2018 CHAPTER 2 - MOONSHAKER II - MARS FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - CHEZ WAM - LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER / PHOTOS THIBALUT GRABHERR
©2018 CHAPTER 2 - MOONSHAKER II - MARS FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - CHEZ WAM - LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER / PHOTOS THIBALUT GRABHERR

作品情報

  • 監督:アントニー・マルシアーノ
  • 脚本:アントニー・マルシアーノ、マックス・ブーブリル
  • 出演:マックス・ブーブリル、アリス・イザーズ『エル ELLE』、マリック・ジディ 『ダゲレオタイプの女』、アルチュール・ペリエ、ノエミ・ルヴォウスキー 『カミーユ、恋はふたたび』
  • 製作国:フランス
  • 製作年:2018 年
  • 上映時間:108 分
  • 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
  • 配給:シンカ/アニモプロデュース
  • 公式サイト:https://synca.jp/play/
  • 新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、kino cinéma立川髙島屋S.C.館ほか全国順次公開中

予告編