カムクワンバ氏からのメッセージ

質疑応答の最後に、カムクワンバ氏が生徒たちに向けてメッセージを贈った。

笑顔で生徒に語りかけるカムクワンバ氏
笑顔で生徒に語りかけるカムクワンバ氏

「人生に壁や挑戦は付き物です。ですから、たとえ困難に見舞われても、それが自分の進むべき道を阻むものだとは思わないでください。自分が成長するためにより深く考えるきっかけを与えてくれ、本当にやりたいことが明確になる機会だと受け止めて欲しいのです。もし本当にやりたいことがあるならば、全てが可能になると私は考えます。世の中の成功者は誰しも、挑戦を挑戦と思わずに乗り越え、夢を形にしてきた人ばかりです。本当にやりたいという思いを信じて、集中して向き合うことさえできれば、きっと何だって成し遂げられるはずだと心から信じています」

これに応える形で、生徒代表の言葉がカムクワンバ氏へも贈られ、特別授業は幕を閉じた。この日、カムクワンバ氏が発したメッセージの要点を一言で的確にまとめたのが印象深い。生徒たちの記憶に深く刻まれる出来事となったのが感じられる。

「教科書だけではわからないことを学ぶことができました。何事も発見しなければ挑戦することができないし、発見によっていろんな未来が開けると思いました。僕たちは当時のカムクワンバさんよりも恵まれていて、いろんな選択肢があると思います。普段見つけられない発見がいろんなところに埋まっていると思うので、それを見つけ出して、自分で選べる人生を送りたいと思いました」

麹町中学校の3年生に囲まれるカムクワンバ氏
麹町中学校の3年生に囲まれるカムクワンバ氏

恵まれた自分を考えてみよう 

翌日、カムクワンバ氏に単独インタビューする機会を得て、「特別授業」の感想を訊ねてみた。

—日本の中学生と交流されていかがでしたか?

「日本の子どもたちはシャイだと聞かされていたのですが、私にはまったくそうは思えなかったです。特に授業の最後に突然先生から指名された生徒さんのまとめを聞いて、私の話に真剣に耳を傾けてくれていたんだなと感心しました。あの日は私からも生徒に質問して、日本のおすすめを教えてもらったんですが、そのうちのお寿司は早速今日のランチに食べましたし、秋葉原の電気街やユニクロ銀座店にも、ぜひ足を運んでみたいと思っています」

—生徒から「自分たちは恵まれていて、いろんな選択肢がある」という発言がありましたが、数ある選択肢の中から「本当にやりたい事」を見つけるには、どのような発想が必要になると思われますか?

「もしすでに多くの選択肢を持ち合わせているのであれば、『なぜ自分はこんなに恵まれているのか』と考えてみるのがベストかもしれません。自分の周りの物がどうしてあるのかを一度よく考えてみれば、誰かが考えたおかげであることに気付ける。そうすればきっと、自分だったらどんな発想ができるか、どうすれば貢献できるかも考えられると思うんです。学生であれば、そこから自分の進むべき道、自分が何をすべきかを考えることにもつながるのではないでしょうか。そしてかつての私がそうだったように、他の誰かにできたのならば、自分にもきっとできるはずだ、という『発想のスパーク』が起きるきっかけにもなるかもしれません」

映画『風をつかまえた少年』より © 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
映画『風をつかまえた少年』より © 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC

—もしカムクワンバさんが普通に学校に通えていて、インターネットが使える環境にあったとしても、ここまでの偉業を成し遂げることができたと思いますか?

「きっと好奇心はいまと変わらず持っていたはずなので、たとえネットがあったとしても、既に得ている知識にさらにプラスになっただけじゃないでしょうか。人はいつでもアクセスできる状態で自分の中に知識を蓄えておくべきだと思います。そういった知識は、別にネットがあってもなくても、誰にでも持てるはずです」

—今回の日本滞在は、今後の人生にどのような影響を及ぼしそうですか?

「私は学ぶことが大好きで、特に他の文化に接して得た学びを、自分の故郷に持ち帰って応用するのが好きなんです。今回の滞在中にいろいろ吸収したものがあるので、今後の人生に必ず役立てたいと思います」

来日中、東京のユニセフハウスで行われた『風をつかまえた少年』上映会後の質疑応答では、若者の夢を支援するため、マラウイにイノベーションセンター開設の計画を進めており、「自分で作りたいと思った機械が実際に作れるような環境を提供したい」と語ったカムクワンバ氏。風車を自力で作り上げた少年時代のまっすぐな気持ちはそのままに、今度は次世代を担う後進を育てる立場として、さらなる進化を遂げている。

取材・文・撮影=渡邊 玲子

© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
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作品情報

  • 監督・脚本:キウェテル・イジョフォー(『それでも夜は明ける』)
  • 出演:マックスウェル・シンバ、キウェテル・イジョフォー、アイサ・マイガ
  • 原作:『風をつかまえた少年』ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー著(文藝春秋刊)
  • 提供:アスミック・エース、ロングライド
  • 配給:ロングライド
  • 製作年:2018年
  • 製作国:英国、マラウイ
  • 上映時間:113分
  • 公式サイト:longride.jp/kaze/
  • 8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開

予告編