認定までに3年、被爆証言者の同意得て修了
厚生労働省によると、被爆者の平均年齢は81.41歳(2017年3月末現在)。被爆者が亡くなり、体験を語る人がいなくなる時代は、すぐそこまで来ている。
「被爆体験の風化が一番怖い」
広島市平和推進課の被爆体験継承担当課長、中川治昭さん(50)は、被爆体験伝承者養成事業の背景をこう語る。
「被爆者として体験を語る活動をされている人を今年調べたところ、胎内被曝の方も含め年齢は71歳から95歳。人数は、200人ほどいると見られていたのに、約150人にまで減少していたのです。有名な被爆者の方も次々に亡くなられ、体験を語る人が少なくなっているのを肌で感じています」
こうした危機感から、同市は2012年度、被爆者から体験の記憶と思いを受け継ぐ被爆体験伝承者の養成を始めた。受講者となった人は、被爆体験証言者として委嘱された被爆者から、おおむね3年をかけて体験を受け継ぐ。今年10月現在、受講者は243人、修了者は92人。現在そのうちの89人(20~80歳代)が活動している。一方、委嘱された証言者は15人。
「応募条件はありません。志ある方であればどなたでも参加できます。修了者の中には東京の方もいて、現地で活動されています」
受講者は修了後、資料館を運営する広島平和文化センターから伝承者として委嘱され、講話の活動をスタートさせている。活動は主に2つ。同館で日に3回行われている定時講話と、学校などの求めに応じて出向く派遣講話だ。語学が堪能な伝承者は、英語でも講話する。
16年度だけで定時講話は1000回を超え、聴講者は1万6000人以上に上った。反響はどうか。
「伝承者の取り組みは素晴らしい、という声を聞く半面、話し方がまだ不十分だという意見もあります。そこはまだ活動を始めて間もないので、長い目で見ていこうと思っています」(中川担当課長)
自分が体験していないのに語る伝承者の養成。3年という養成期間は、その挑戦の大きさを反映している。1年目は、被爆体験の講話を聞くなどしつつ、アナウンサーから話し方の技術を学ぶ。2年目は、体験を受け継ぐ証言者に付いて、伝承の内容となる講話原稿を作る。3年目には、原稿を基に講話の実習を重ねる。修了は、主催者である市が該当の証言者の同意を得たうえで認定する。
最短でも3年間を費やすプログラムには気力と体力が求められる。中でも受講者が最も苦労するのは、講話原稿の作成で、証言者からの「だめ出し」を受け、つまずく人もいる。途中で辞退する人も少なくない。
晴れて伝承者となったとしても、現在は、被爆者自身が語り部として活動している。聴講希望者にとってみれば、「両者を比べたら、やはり被爆者から話を聞きたい」という人が多くても不思議ではない状況だ。
中川さんはそれについてこう話す。
「伝承者が話すというのはまだ早いという考えの方もいらっしゃるかもしれません。ただ、今やらないと、被爆者の方が本当に近い将来ゼロになってしまいます。それからでは遅いのです」
「もっと言えば」と、中川さんは更に真剣な表情で言った。
「協力いただける被爆者がいなければ、(被爆体験の継承は)できないのです。(存命でも)肉体的に無理だったらどうしようもない。ですので、今のうちにできるだけ多くの養成を続けたいと思っています」



