ロヒンギャ問題での過度な圧力は逆効果も
野嶋 ロヒンギャ問題などで欧米各国が引き気味になる中、日本はミャンマーで独走しているのかという批判はありませんか。
丸山 この国は1988年から2012年まで軍事政権でした。その間は、民主化、人権の改善をミャンマーの国民が希望し、国際社会の願いも一致していた。しかし、ロヒンギャ問題では、国民のほとんどが国際社会の批判に反発しています。圧力をかけるほど、ミャンマー政府は国際社会に背を向けて、ますます解決が遠のきます。制裁は逆効果の面があるのです。
2015年に初めて公正で自由な総選挙を行い、一滴の血も流さずに政権がNLD(国民民主連盟)に渡りました。その事実だけでも歴史的な偉業です。ミャンマーがさらに前に進めるように支えることが大事で、やっと始まった国づくりのプロセスを壊すことはできない。
過度な圧力で内政が不安定化した場合、日本企業は投資にちゅうちょし、ODAを出すのも難しくなるかもしれない。それはこの国の将来にはプラスではない。日本はミャンマーに寄り添っていくべきです。
重要な日米の連携
野嶋 しかし、日本単独では限界もあるのではないでしょうか。
丸山 日本は米国と十分、ミャンマー問題を含めて、東南アジアで組んでいけると思います。米国も議会、人権団体にいろいろな声があり、厳しい立場を取らざるを得ない場合もありますが、政策としてNLD政権を支援し、ミャンマーの国づくりを助けていく方針には一切変更がないと思います。ですから、ミャンマー政策ではいかに米国と組むのかが重要になってきます。
野嶋 ロヒンギャ問題が起きたラカイン州は、すでに人権問題という良識を超えて、アラカン民族主義を掲げた過激派組織が台頭し、治安維持が困難になりそうな事態です。
丸山 ミャンマー政府がバングラディシュに逃げた人々の帰還を受け入れるための準備を、外からも見える形で加速化させることが重要です。ラカイン州に対する国連のアクセスをより認めさせていくべきだとミャンマー政府に働きかけています。日本政府はスー・チー氏、国軍司令官、国連機関とも関係が良好で、できるだけ仲介の役割を果たしていきたい。
野嶋 ミャンマーでこれぐらいフリーハンドで動ける国はないのではないでしょうか。
丸山 ないと思いますね。スー・チー氏も日本からの協力に期待していると思います。
不透明な「スー・チー後」の姿
野嶋 丸山さんはスー・チー政権のこの3年の統治をどう評価しますか。
丸山 パフォーマンスについては、政権樹立当初の経済政策でもたもた感があったのは事実です。去年5、6月以降、閣僚の組み替えを行い、投資委員会のトップを代えて分かりやすくなったので、これから良くなっていくのかなと。少数民族和平やラカイン州(ロヒンギャ)問題などの政治面は、うまく進められていない感じです。われわれも見ていて心配なところがありますね。
2020年(の次回選挙)でも、議会は25%が軍人議員と決まっているので、NLDは得票率67%を獲得しないとNLDでの単独過半数は取れない。現在の人気では、そのハードルは高いかもしれません。ただ、相対多数を維持することは間違いないと思います。その場合、少数民族勢力などとの連立の組み方が問題になりますね。
野嶋 それにしても、ポスト・スー・チーになれる人材がまったく浮かんできませんね。
丸山 スー・チー氏はいま73歳。20年の選挙に勝利したとして、次期の5年間で経済、国内和平、ラカイン問題といった主要な課題に道筋をつけられるのかどうかが重要だと思います。
バナー写真:ミャンマーのネピドーでウィン・ミン大統領に信任状を奉呈し、握手する丸山市郎大使=2018年5月3日(AP/アフロ)

