参議院の選挙制度改革は、「鳥取・島根」「徳島・高知」を1つの選挙区に「合区」する「10増10減案」で決着した。一票の格差が2.97倍となるこの案を「違憲のおそれがある」とし、自民党会派を離脱した脇雅史・前参議院選挙制度協議会座長にインタビューした。
「抜本改革」の義務果たせず
——参院幹事長、国対委員長などの要職を歴任した脇さんが、この選挙制度改革をめぐって会派離脱の決断までされて反対した。どのような信条、思いがありますか。
脇 雅史 まず、参議院が置かれていた状況について話したい。2度にわたって最高裁から「違憲状態」と言われていた。「違憲状態」というのは直す時間が限られていたということで、中身は違憲ということだ。合憲と言える状態に変えなければ選挙は出来ない。
それに加えて、私たちは3年前に「4増4減案」というものを通したのですが、その時に次回選挙までに「抜本改革をやります」と法律の附則に書いた。立法府にとってこれほど重たい義務はないだろう。私たちは法律をつくる立場で、その自分で言ったことを守れないほど無責任なことはない。今の時点までに、抜本改革をするしか道がない。そういう状況だった。
選挙制度協議会座長として昨年4月、議論を前に進めるために“たたき台”の案(注:22都道府県を「合区」して格差を1.83倍にする座長案)を提示し、各会派にそれぞれの案を出してほしいと求めた。自民党はびっくりして、最後まで案を出さなかったわけだが…。
格差是正、「合区」か「比例」しかない
脇 格差を是正するためには、「合区」か「比例」にするかの2つしかない。自民党、民主党はもともと“地方代表と比例代表と分けていた方が、多様な人材が出てきていいだろう”という考え方。だから、比例(だけ)では多数はとれない。したがって座長案としては「合区」案を採用した。
私は国会議員の一人として、合理的に「合憲ですよ」と言えなければ、賛成できないと考えた。「それはちょっと真面目すぎるのでは」という人もいる。だが本業で法律をつくる立場の者が、立法過程で「真面目でない」というのはあり得ないでしょう。違憲立法になるような法案を提出する立場にはなりたくないと考えて、会派を離脱することにした。
——会派離脱の記者会見で、自民党議員らの日ごろの発言ぶりについて「順法精神の感覚が非常に乏しい」とまで指摘されています。
脇 ちょっとひどいのではないかと思う。よく総理が「法の支配」というが、私たちは3年前から「法の支配」によって抜本改革をしろと命じられた立場だった。だが、口だけで、実際はやらない。まがりなりにも他の野党は抜本改革案を出した。自民党は出さなかった。また、「10増10減」案に(相乗りしたことに)ついて、まったく反省の念がない。「法治国家の屋台骨が揺らいでいる」とさえ思う。国会議員が自ら法律をつくって、その法律を破って平気でいる。ここまで国会議員の質は落ちたのかと感じている。