違憲訴訟が起きる

改正がその場しのぎだったことと関係するのだが、このたびの合区は憲法違反だと筆者はにらんでいる。憲法95条は、「一の地方公共団体」のみに適用される法律は、当該地方公共団体の住民投票においてその過半数の同意を得なければ制定することができないと規定する。ここで「一の地方公共団体」とあるのは「特定の地方公共団体」という意味であって、それが複数であっても排除されない。要するに、一部の地方公共団体にのみ不平等や不利益を押し付ける法律が、国会の多数によって制定されるのを防止しようとするのが、憲法のこの規定の意味である。

改正後の公職選挙法の規定では、鳥取、島根、徳島及び高知の4県を除く他の43都道府県はいずれも都道府県単位に選挙区が設定されているのに、4県だけは2つの県を区域とする選挙区とされる。これは、4県では純粋にその県から選出される参議院議員がいなくなるという点において、まさしく特定の地方公共団体にのみ不平等ないし不利益を被らせていると言える。そこで、この改正をするに際しては、該当の4県で住民投票が実施されなければならなかったのに、その手続きを踏んでいない。この改正を憲法違反だと指摘する所以である。

仮に、合区についてしっかりしたルールが定められていて、将来いずれかの都道府県の人口が一定の基準を越えて減少した場合には、そのルールに従って機械的に二つの都道府県の区域を選挙区とすることが明らかにされていれば、事情は違ってこよう。今回はたまたま該当の4県だけがそのルールの適用を受けたもので、他の43都道府県もいずれ条件を満たせば、同じ取り扱いを受けることになるのだから、特定の4県だけに不平等や不利益を押し付けたことにはならないからだ。

しかし、先に見たように、このどさくさの改正では、この種のルールは何も定められていない。法律の上では、あたかも4県だけを狙い撃ちしたかのように特別扱いしている。この点に関して付言すれば、このたびの改正に際し、平成31年度の参議院通常選挙に向けて「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得る」と、改正法付則に規定している。裏を返せば、今次の改正はルールも定見もないものだと、国会が自ら告白しているのである。

来夏の参議院選挙では、1票の格差を争うこれまでのタイプの違憲訴訟は取りあえずおさまるのかもしれないが、新手の違憲訴訟が起きる可能性が出てきた。とても重要な法案であるにも関わらず、それを国会議員たちが無造作に扱ったツケが回ってきそうである。

バナー写真:参院の中村剛事務総長(中央)に、公職選挙法改正案を共同提出する自民党の溝手顕正参院議員会長(左から3人目)、維新の党の片山虎之助参院議員会長(右から3人目)ら=2015年7月23日、東京・国会内(時事)