本土派がまとまれない3つの理由

野嶋

 雨傘運動のリーダーたちは今どうしているのでしょうか。

倉田

 一番有名だったジョシュア・ウォン(黄之鋒)はまだ19歳なので出馬できません。そこで「香港衆志」(デモシスト)という政党をつくって香港島から別の候補者を擁立していますが、世論調査では当選の可能性はほとんどゼロに近い状態です。彼らの雨傘運動の路線は、今の若い人たちから見れば、ちょっと生ぬるかったと思われています。香港衆志は今のところ人気や存在感は無いです。台湾では、ヒマワリ運動に参加した若者は「時代力量」という政党をつくって、民進党の政権獲得にも協力しました。対照的に香港は「砕片化」と呼んでいますが、小さな団体が山ほどあって、一生懸命、他のグループとの差異化を図っていて、一体感はほとんど見られません。

野嶋

 香港で本土派などの勢力が台湾のように結集できない理由はどこにあるのでしょうか。

倉田

 香港の選挙制度がそれを促しています。立法会は中選挙区制なので小政党に有利な制度です。もう一つの理由は、雨傘運動は、基本的には「自発的な運動であり、組織動員ではない」との前提だったので、結果的に「俺が俺が」という人が集まって来ました。インターネットで手軽に組織も作れます。信頼できる仲間で小さな組織を作るのが快適なのでしょう。

香港そのものの方向性が定まっていないところに3つめの理由があります。台湾は政権交代を実現しよう、新しい総統の下で政策を実行しようとまとまれますが、香港は八方ふさがりです。民主化が否定され、市民が政治参加するルートが閉ざされました。そうなると、想像の世界で言いたいことを言うようになり、香港独立、真の普通選挙、住民投票、自治などいろいろなアイデアはあるが、実現できないという意味では結局どれも同じです。本当の意味で理想を追求するだけの競争になっていて、理想を実現するための取引や妥協への思考が働かないようになっています。

ただ、ある種、バーチャルに論争されていることはダイナミックでもあります。徹底してそれぞれの理想を追求して論じる社会になっています。もちろんそれは大人からみると不可解な現象で、親中派の大物であるヘンリー・タン(唐英年)は、現在、全国政治協商会議の常務委員ですが、「お腹一杯でやることがないから、暇な連中が無意味なことばかり言っている」と発言しています。それがある程度、香港の「大人」の主流の意見です。