日本では「異端」、“シットコム”へのこだわり
楽しみながら数々のコメディーを生み出している印象の三谷氏だが、自分自身は「異端」だと感じているようだ。
「“シットコム”は基本的には会話劇で、会話の面白さと人間関係の面白さだけで見せていくものです。そもそも日本の文化の中にコメディーはなかなか根付かない。例えば映画で日本の代表的コメディーは何かと聞かれて 純然たるコメディーとしてタイトルを挙げることができる作品はそんなにない」
「アメリカでは10年ぐらい前、歴代コメディー100【編集部注:AFI's 100 Funniest American Movies Of All Time】を選んだけれど、それは日本ではできない気がする コメディーをつくるということ自体が、ある種異端です。その中でも、会話で見せるコメディーはほとんどないし、異端の異端かもしれません」
一方、三谷コメディーは海外でも人気だ。1993年の自身の舞台作品を映画化した初監督映画『ラヂオの時間』はベルリン国際映画祭で審査員特別表彰を受賞。その時の印象を三谷氏はこう語る。「ベルリンで上映したとき、一番後ろで見ていました。上映中は笑い声しか聞こえてこないし、日本の映画館より“笑いどころ”が多かった。明かりがついたとき、ドイツ人ばかりだということに、あらためてびっくりしました」。
『THE 有頂天ホテル』(2006年)、『ザ・マジックアワー』(2008年)、『ステキな金縛り』(2011年)は台湾、韓国でも上映され、「特に台湾では『ザ・マジックアワー』が喜劇映画の代名詞になっている」といわれたそうだ。今回の『ギャラクシー街道』も「会話劇ですが、日本語でなければ成立しないような言葉遊びは一切ない。うまく各国の言葉に翻訳できれば、世界中で楽しんでもらえると思います」。
あくまでも“いち映画ファン”の脚本家として
映画監督としての作品は『ギャラクシー街道』で7作目。その間にテレビドラマの脚本、そして数多くの舞台の脚本・演出を手掛けてきた。「映画監督である前に映画ファン」と公言する三谷氏だが、自分のバックボーンはあくまでも脚本家だという。
「一番大事なのは脚本を書くこと。その時間をきっちりキープします。それがなくなってしまうようでは、映画も撮れないし、舞台の演出もできません」と三谷氏はきっぱり言う。
当面は来年1月から放映開始のNHK大河ドラマ『真田丸』の脚本に集中している。「今は週1本書かないといけないペースになってきているので、毎日、ほぼずっと書いています」。
無声映画、戦争映画、ミュージカルにも挑戦したい
多忙を極める中でも、数年に1本のペースで映画を撮るのは自分にとっての楽しみなのだという三谷氏。だからこそ、映画に対する夢はつきないようだ。
「基本的に自分は脚本家ですから、脚本家がつくった映画というスタンスは崩れないし崩さない。とりあえず自分はいち映画ファンという割り切りができているので、自分が楽しんできたいろいろなジャンルを自分が再構築したいという、ある種の趣味みたいなところがあります。時代劇、SFはやったので、無声映画、戦争映画、ミュージカルもやってみたい」
オリジナル・ミュージカルの可能性に関しては、DVDで見たクレイジーキャッツのコントのひとつに刺激を受けたという。書き割りの宇宙空間で植木等が、重力何のそので「歌い踊るのがかっこよかった」。今回の『ギャラクシー街道』も“ミュージカルシーン”で締めくくられているが、近い将来、本格的な三谷版ミュージカル映画が登場するかもしれない。
取材・文:板倉君枝(ニッポンドットコム編集部)
タイトル写真=映画『ギャラクシー街道』のヒロイン、ノエを演じる綾瀬はるか(左)を演出する三谷幸喜監督 (C)2015フジテレビ 東宝


