交代の効果
頼は7年間、直轄市台南の行政を担い、立法委員も3期やっている。頼の市政も細かく見れば問題・トラブルがいくつもあり、鉄道地下化など今も引きずる重荷もある。中央の行政はさらに難題が多く、過度の期待は禁物だ。だが、地元で高い評価を得てきたことはプラスの資質である。
交代により大きな改善が見込めるのは、政権の政策・意図を分かりやすく説明する能力だ。これは地方で選挙を戦ってきた政治家が長(た)けていて、蔡も林も苦手である。
また、林が不得意な立法委員との意思疎通も改善するであろう。林時代は、与党立法委員が常に「聞いていない!」状態に置かれていた。頼は陳水扁政権時代に立法院と行政院との橋渡しをした経験があるので、与党議員団と行政院の政策擦り合わせのプロセスが改善するのではないか。
交代が政権の満足度にプラスに働くのは間違いない。しかし、蔡政権が進める改革が多岐にわたり、それぞれが強い反対論を抱えているので、楽観視はできない。満足度は一度上がって徐々に下がり、林時代より少し高いところに落ち着くのではないか。蔡総統の満足度が30%半ばで推移すれば、十分効果があったと言える。
内政面では、軍人年金改革、税制改革、産業構造転換、司法改革など林内閣が敷いた改革レールの上を走るので基本的に継続となる。林内閣が導入し不評を買っている変則的週休二日制(一例一休)については修正に動く可能性がある。
対中政策、対日・対米政策は総統の専決事項であり、行政院長の交代で影響されるわけではない。頼は確かに信念の独立派であるが、政治家としては現実的で柔軟であり、蔡の中台関係現状維持政策を支持している。頼は中国に対しては蔡が総統就任時に行った「520就任演説」以上の譲歩は必要ないと考えているが、これは民進党内の一般的な考え方であり、蔡と足並みが乱れることはない。行政院長に頼が登場したことによって中台関係がさらに悪化するとの一部メディアの指摘は当たらない。
対日・対米政策では、戦略的観点から日米重視の程度は蔡と変わりはないが、日本に対する親近感という点で、頼は蔡より高いと言えるであろう。頼は市長時代に何度も訪日し、日台の交流を推し進めた。