唯一無二の魅力は人情味

台南のいいところは、数字や経済的価値では計り知れないところことだ。おいしい食べ物はもちろんだけれども、台南の人々の観光客に対する優しさや人情味が忘れられず、何度訪れてもまた飽きずに行きたくなる。

台南の唯一無二の魅力は、人情味なのである。

マルヤンさん(馬路楊先生)という台南人は神農街からほど近い場所で檳榔(ビンロウ)店を開いている。1坪(約3.3平方メートル)ほどの小さな店に、これまで500組、延べ3000人以上の日本人が訪れた。「外国人観光客が訪れる檳榔店」として、日台のメディアに取り上げられ、台南の民間大使として、日々忙しくしている。

人気のきっかけは、『わたしの台南』だったかもしれないが、その後はマルヤンさんに会えば本当の台南を体験できる、台南人の人情味に触れられると、インターネット交流サイト(SNS)や口コミで広がったものだ。

私は、マルヤンさんこそが台南の本当の価値を象徴しているのだと思っている。台南には、何百人、何千人の名もなきマルヤンさんがいて、日々、外からやってきた観光客を感動させているのだ。

台南観光の急成長の裏で、これら台南の価値には大して関心のない人たちがどんどんやってきて、人情味までも失われてしまうことは、店が一つ二つなくなってしまうことより大きな損失であることは間違いない。

冒頭の通り、九份、日月潭、阿里山など、台湾には世界的にも有名な観光地が多くある。しかし最近、どこも同じような飲食店や土産物店が並び、個性がないように思う。観光シーズンのたびに、台湾のメディアは画一的な観光開発を批判する論調で騒がしくなる。

もちろん、日本でも同じようなことがないわけではない。しかし、京都や金沢、倉敷のような古都では、歴史的建造物の保全や景観を保つよう、地方自治体による厳しい条例が施行され、所有者でも、勝手な売却やリノベーションには高いハードルがある。台湾のように、自由度が大きいと役立つ時もあるが、街の雰囲気を保持するためには一定の制限も必要ではないだろうか。

台南には、独自の魅力を失わないで、今後も開発と保存のバランスを保ちながら、歩んでいってほしい。台南親善大使として、台南の認知度や人気がますます高まることを願い、そのための努力をこれからも続けたい。

神農街での筆者(筆者提供)
バナー写真=神農街で写真を撮るカップル(筆者撮影)