新年に神を迎える日本、魔物を追い出す台湾

新しい年を安らかに、かつ清らかな気持ちで迎えたいという心情は、万国共通だろう。日本の家庭では、年末に大掃除をし、門松やしめ飾りを門前に飾ったり、鏡餅や破魔矢を屋内に飾ったりする。

正月のしめ飾り(筆者提供)
正月のしめ飾り(筆者提供)

日本の民間信仰では、正月になると山から「年神様」という神様が家にやってくると考えられてきた。大掃除、門松、鏡餅は、いずれも年神様を丁重にお迎えするためのもので、魔除けとは関連が薄い。魔除けの役割を担うのはしめ飾りや破魔矢である。

一方、中国や台湾には、大みそかに「年獣」という四つ足の魔物が人里を襲うという伝説がある。年獣は赤いもの、光、大きな音を苦手としており、正月の儀式にはこれと関連するものが多い。

日本の正月のしきたりが、謹んで神様をお迎えする意味合いが強いのに対し、中華圏では怪物を撃退することに関連しているのが面白い。

例えば、春聯(しゅんれん)。おめでたい言葉を書いた赤い紙で、門の左右上方に貼り付ける。日本のしめ飾りは1月7日に取り外すが、春聯はそのままにしておくのが習わしだ。筆者が以前台湾で蕎麦屋を営んでいた頃、日本製の立派なしめ飾りを掛けたはよいが、後日取り外そうとすると「こんなにきれいなものをもったいない」と周囲の者から反対され、不本意ながら一年中飾ったままにしていたこともあった。

台南の古民家に貼られた破邪物「春聯」(筆者提供)
台南の古民家に貼られた破邪物「春聯」(筆者提供)

台湾の新年に欠かせないもう一つの破邪物は、爆竹である。大昔には実際に竹を使っていたそうだ。竹を火であぶると、節の中の空気が膨張して爆発を起こす。6世紀ごろに中国で書かれた《荊楚歳時記》には、元日の鶏が鳴く時分に庭先で爆竹を鳴らし、「山臊」という悪鬼を追い払うとの記述が見られる。

爆竹は正月に限らず、道教の祭典や、結婚式などの祝いの場でもよく鳴らされる。ただ田舎では鶏が驚いて卵を産まなくなり、都会では近所迷惑になるということで、近年は行政が自粛を求めている。

爆竹を別にしても、正月の台湾は、騒がしい。家庭でもレストランでも親族同士が大声で会食し、テレビからも絶え間なく笑い声が聞こえてくる。実はこれも魔除けの一つなのだ。年獣は音を苦手とするのである。ここは、社会全体が静謐(せいひつ)な空気に包まれる日本と対照的なところだ。