そして来年へ:三社祭は“世界にふたつとない”

2012年の三社祭で特筆すべきことがもうひとつあった。一度途絶えた駒形町会の子供神輿の観音裏渡御が10年ぶりに復活したのだ。

「一度途切れたものを復活させるのは大変。だからこそ、祭りを大事にしていきたいとあらためて思いました。100%の出来だと満足することってなかなかない。だからこそ、どれだけ強い思いを込められるかが大事になる。手描きの提灯だって同じ。手作業だから微妙に違っていて、世界にふたつとないからいいんじゃないかなって思っています」

「来年は今年よりもっといい祭りにしますよ。決して比べるもんじゃないけどね」。祭りが終わった直後にあえて来年の祭りについて尋ねたときの恩田さんの返事である。笑顔には、大きな仕事をやり終えた男の自信があふれていた。

神輿を組んで30年という頭(かしら)の菊池さん。
「子供たちには思いっきり祭りを楽しんでもらいたい。大人はそれをサポートするのが役目」とは伊東さん。
「ほかの担ぎ手より背が高いから、しゃがんで神輿を担がなきゃならないんだよ」とはアメリカ・オレゴン出身のDavidさん。神輿を担いでいる間は、何度も足を踏まれるらしいが、足袋は柔らかいからそんなに気にならないのだそう。
駒形町会の前をたまたま通りかかったオーストリア人の、BryanさんとFrancyさん【中央】。「日本に着いて間もないし、時差ボケが残っているけど、祭りの輪に入れて最高!」思わず半纏を借りてポーズ。浅草の人びとはこうやって外の人も温かく受け入れてくれる。
うなぎ「前川」の娘さんと結婚し、駒形の住人となったロシア人(スペイン国籍)のIvanさん。今年、青年会のメンバーとして三社祭に初めて参加した。娘のSophieさんとともに。
オーストラリア出身のMarkさん。三社祭の参加はこれで10年目。「駒形の印象?そうだな、外からの人間を快く受け入れてくれる懐の広さを感じるよ」。

 

取材・文=廣瀬 達也
撮影=山田 愼二、コデラケイ、花井 智子