新語・流行語・今年の漢字

「そだねー」が大賞に:2018年の新語・流行語

社会 文化

今年の世相を表す言葉を決める「2018 ユーキャン新語・流行語大賞」(自由国民社『現代用語の基礎知識』選)の年間大賞とトップテンが12月3日、発表された。

スポーツ関連の流行語が多く選出

年間大賞に選ばれたのは、平昌五輪で活躍したカーリング女子日本代表が競技中にしばしば口にして使って話題となった「そだねー」だった。オリンピックという大舞台で銅メダルを獲得したトップアスリートから発せられる、どこかのんびりとしたやりとりは、試合をテレビ観戦する人々にホッとするひと時をもたらした。

トップテンには、対戦型ゲームを競技としてとらえる「eスポーツ」を含め、スポーツ関連の流行語が4つも選ばれた。このほか、裁量労働制に関する国会審議の中で加藤勝信厚生労働相(当時)が行った、論点をすり替えた答弁のやり方を指す「ご飯論法」などが入った。

年間大賞とトップテンは、文化人らによる選考委員会が候補30語の中から選出した。選評では、複数の委員から「スポーツ界のパワハラ問題が続々と噴出した」という意見があった。一方で、姜尚中・東京大学名誉教授は、大賞を獲得した「そだねー」に象徴されるように「人の温もりが直に伝わるような言葉が歓迎されているのかもしれない」と述べた。

『現代用語の基礎知識』編集部長の清水均さんは、平成元年の受賞語が「セクシュアルハラスメント」だったことを挙げ、平成最後の年もアマチュアスポーツ界での「パワハラ」がまかり通っている現実を見せつけられたと指摘。コラムニストの辛酸なめ子さんは「#MeToo」で女性の大変さを、「奈良判定」でスポーツのダークな面という現実の辛さを見せつけられながらも、「そだねー」で癒しをもらい、小学生の女の子チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱咤激励されたように感じた、と述べた。

年間大賞、トップテンの新語・流行語

そだねー【年間大賞】

平昌五輪の女子カーリングで、日本の代表チーム・LS北⾒が銅メダルを獲得。氷上のチェスと言われ極限状態での息詰まる攻防が繰り広げられる同競技では、どんな息詰まる会話が交わされているのか思いきや、中継中のマイクが拾ったのは北海道弁の「そだねー(そうだね)」だった。トップアスリートの彼女たちは俗にいう「ゆとり」世代で、マイペースを貫きながらも、仲間を尊重しながら結果をきちんと残す、次世代の担い手としての実力を見せつけた。

LS北見として知られるカーリングチーム、ロコ・ソラーレ代表理事の本橋麻里さんは「故郷からカーリングをもっと広めたい」と受賞の喜びを語った。(撮影=ニッポンドットコム編集部)

nippon.com関連記事

eスポーツ

eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略。コンピュータやビデオなど電子機器を使って行う娯楽、競技、スポーツ全般の対戦型ゲームを、「スポーツ競技」として捉える際の名称。すでに数億円を稼ぎだしているプロもいる。eスポーツの盛り上がりに目を付けた国際オリンピック委員会が、競技の採用を検討しているという。

(大迫)半端ないって

サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会のグループリーグ・コロンビア戦、日本代表はフォワードで先発した⼤迫勇也選⼿が大活躍して南米勢から初の勝利を挙げた。ファンからは「半端ない」と、大迫選手への称賛が相次いだ。2009 年の⾼校サッカーで、当時の対戦相手が試合後に「⼤迫、半端ないって。あいつ半端ないって」などと語ったエピソードがサッカーファンに知られていた。大迫選手の秀でた技術力とパフォーマンスを的確に表現し、敬意にあふれたこの言葉には、サッカーファンでなくても納得させられる説得力があった。

nippon.com関連記事

おっさんずラブ

2018年4月から6月までテレビ朝日系列で放送された連続ドラマ。女好きだがモテない主人公の「おっさん」・春田創一(田中圭)が、ピュアな乙女心を隠し持つ上司の「おっさん」黒澤武蔵(吉田鋼太郎)に告白された―。春田と同居しているイケメン後輩・牧凌太(林遣都)も巻き込んで、おっさんたちが織りなす純愛ラブコメディが、SNSでの盛り上がりを追い風にしてブームとなった。

ご飯論法

裁量労働制に関する国会審議の中で加藤勝信厚生労働相(当時)が行った、論点をすり替えたのらりくらりとした答弁の論法を指す。法政大学の上西充子教授がツイッターにハッシュタグ「#ご飯論法」と投稿して話題になり、国会審議でも引用された。授賞式で上西教授は「朝ごはんは食べたんですか? という問いに“ごはんは食べていません(パンは食べたけど)”というはぐらかしがあった。これを“ご飯論法”として名づけることで、人々に欺瞞だと気付いてほしかった」と述べた。

災害級の暑さ

7月23日に埼玉県熊谷市で41.1度を記録し、国内最高気温が5年ぶりに更新されるなど、7月中旬から下旬にかけて猛暑が続いた。気象庁の予報官は同23日の記者会見で「命の危険がある温度。ひとつの災害であると認識している」と語った。これを受けて政府は、エアコンを設置するため補正予算を計上し、公立小中学校のエアコン設置に動いた。

スーパーボランティア

2018年8月、山口県で行方不明になった2歳の男児が68時間ぶりに無事保護された。県警が1000人規模で捜索しても見つからなかったが、自前の救助車で捜索にかけつけたスーパーボランティア・尾畠春夫さん(当時78歳)によって無事に発見された。尾畠さんは、今回の活躍以外にも、登山道を補修したり、全国の被災地支援を行ったりするなど、これまでにも地道なボランティア活動を続けてきたという。

nippon.com関連記事

奈良判定

2016年の岩手国体で、日本ボクシング連盟の山根明前会長が影響力を行使して奈良県の選手に有利な判定がされたのではないか、という疑惑が明るみに出た。2018年のスポーツ界では、日本大学アメリカンフットボール部による悪質タックル問題のほか、レスリング女子の監督パワハラ問題など、はびこる暴力的な体質や忖度といった問題に大きく揺れた一年でもあった。

nippon.com関連記事

ボーっと生きてんじゃねーよ!

NHKのテレビ番組『チコちゃんに叱られる』に登場する5歳の女の子チコちゃんは、いろんなことに「なぜ?」「どうして?」といちいち質問してくる。彼女の素朴な問いかけに、適当な回答でごまかそうとする大人をチコちゃんは許さない。そのときのキメ台詞が「ボーっと生きてんじゃねーよ!」という一喝だ。

撮影=ニッポンドットコム編集部

#MeToo

アメリカの有力新聞ニューヨークタイムズと雑誌ニューヨーカーが、ハリウッド映画界の大物プロデューサーらのセクハラ疑惑を報道すると、ハリウッドにとどまらず性被害を告発する女性たちが続々と表れた。これが「#MeToo」運動となって、一気に世界に広がった。

撮影=ニッポンドットコム編集部

バナー写真:平昌五輪・カーリング女子3位決定戦で、英国を破り銅メダルを獲得し喜ぶ日本チーム。(左から)吉田知那美、藤沢五月、本橋麻里、鈴木夕湖、吉田夕梨花=2018年2月24日、韓国・江陵(時事)

日本語 新語・流行語 言葉 2018年の出来事 世相 新語