表紙にミッキーマウスも登場
ツバメノートが単なるレトロなノートメーカーにとどまっていない点も興味深い。さまざまな企業やブランドとコラボレーションしたノートを次々に発表し、新製品の開発にも意欲的だ。
例えば8年前から発売しているディズニーとのコラボ商品。表紙にはおなじみのミッキーマウスのキャラクターが描かれ、縁取りのデザインの中にさりげなくミッキーのモチーフがちりばめられている。パッと見では分からないだけに、ディズニーファンには宝探しのような楽しさがあるノートだ。
過去には、有名デザイナー、アニエス・ベー特注のノートも製作している。このとき使用したのはバイキングフールス紙。ツバメ中性紙フールスよりもさらに上質な書き心地の高級紙だ。
「インクの浸透度や平滑度(へいかつど)は断然上です。スムーズに発進するロールスロイスみたいに滑らかにインクが浸透していく。書いてみるとわかります。ただコストが高いので、今は生産されていません。バイキングフールスを使うとノートの値段がどうしても高くなるので、売れる量が限られてきますからね。でもそういうノートをセレクトしたアニエス・ベーのブランドは素晴らしいですよ」
今は幻となったバイキングフールス紙を熱く語りながらも、渡邉さんの目は常に未来を向いている。2017年4月には、400年の歴史を持つ富山県の伝統工芸・高岡銅器を表紙にあしらった「Perfect.Z」という新作を発表した。銅器着色技術で高い評価を得ている富山県の折井着色所と一緒に作りあげた芸術作品のような趣の化粧箱入りノートだ。
時を同じくして、ツバメノートはブライダル情報誌「ゼクシィ」と連携し、本誌の付録として、国内リゾートウエディング版と海外ウエディング版の「ブライダルノート」を開発している。結婚が決まった瞬間から挙式当日まで、ゲストリストや予算配分など花嫁がやっておくべき “TO DO” を網羅した。荘厳な雰囲気の「Perfect.Z」と、結婚式の準備に余念がない女性のための「ブライダルノート」。ツバメノートにはさまざまな「顔」がある。
最後にツバメノートの由来を聞いてみた。
「ノートを出した当時、営業に燕(つばめ)さんという優秀な男性社員がいたんですよ。モンゴメリー・クリフト(1950年代に人気を得ていたハリウッドの男優)みたいに男前で、話もすごく上手でね。得意先からは『おたくはノートもいいし、人もいい』と褒められて、『燕さんのノートちょうだい』とよく言われた。初代が『だったら』とノートにその従業員の名前をつけちゃった(笑)。でも、B5版のノートの背の部分には初代の名前のW(渡邉)が、A5版にはH(初三郎)がついているから、ちゃんと初代の名前も残っています」
従業員の名前を冠したブランド名は後にも先にもツバメノート以外に例がないのではないか。どこかほんわり温かくなるようなエピソードを秘めたツバメノートは、洗練された雑貨のセレクトで知られるニューヨークやパリのコンランショップでも販売され、好評を博している。極上の「書き心地」を追い求める志向に国境はない。
撮影=長坂 芳樹



