国立歴史民俗博物館(歴博、千葉県佐倉市)で企画展示「アイヌ民族と博覧会 ―150年の経験―」が開催中(11月29日まで)。約200点に及ぶ資料を集め、明治初期の工芸品から2025年の大阪・関西万博の舞踊公演に至るまで、アイヌ文化の歩みを壮大なスケールでたどる。

自ら文化の表現者に

日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌ。彼らは、万物に魂(カムイ)が宿るとする深い精神性を背景に、独自の芸能や工芸を発展させてきた。自然との共生に根差すその文化は近代以降、国内外の博覧会で注目を集め続けている。本展は北海道白老町の「ウポポイ(民族共生象徴空間)」内にある国立アイヌ民族博物館と歴博の共催によって実現。「博覧会」という国際的な舞台で、アイヌの人々が約150年の間、自らをどう表現してきたかを解き明かす。

幕末のアイヌ工芸品(松浦武四郎記念館蔵)
幕末のアイヌ工芸品(松浦武四郎記念館蔵)
拓殖博覧会(1912年)の絵はがき(国立アイヌ民族博物館蔵)
拓殖博覧会(1912年)の絵はがき(国立アイヌ民族博物館蔵)

ひと際目を引く展示が、樹皮の繊維を丹念に織り上げた伝統衣装。魔よけの祈りが込められた幾何学模様の刺しゅうが存在感を放つ。伝統工芸の木彫り細工も必見で、150年以上の時をさかのぼる品々は国の重要文化財に指定されている。極上の手仕事は近代の博覧会に出品され、意匠の美しさで人々を魅了した。

20世紀初頭には、アイヌ民族が国内外の博覧会に赴き、自らの暮らしぶりを披露する機会もあった。当時の資料には、好奇の目にさらされる苦悩や現地の人々と国境を超えた友情を育む姿などが克明に記されている。

戦後になると、アイヌの人々による主体的な文化発信が加速し、1970年の大阪万博から2025年の大阪・関西万博に至るまで舞台公演を通じた表現が定着。展示では、舞踊の映像と共に参加者の肉声を紹介し、伝統文化を未来へとつなぐ現代の担い手に焦点を当てる。

拓殖博覧会(1912年)出場者の着用衣装(松本市立博物館蔵)
拓殖博覧会(1912年)出場者の着用衣装(松本市立博物館蔵)
明治記念拓殖博覧会(1913年)で銅賞を授与された名工の盆(貝澤ウトレントク作、個人蔵)
明治記念拓殖博覧会(1913年)で銅賞を授与された名工の盆(貝澤ウトレントク作、個人蔵)
北海道開発大博覧会(1950年)で展示されたジオラマ(国立アイヌ民族博物館蔵)
北海道開発大博覧会(1950年)で展示されたジオラマ(国立アイヌ民族博物館蔵)
北海道開発大博覧会(1950年)の出品作とされる「山丹錦(さんたんにしき)」(バチラー八重子作、立教小学校蔵・国立アイヌ民族博物館寄託)
北海道開発大博覧会(1950年)の出品作とされる「山丹錦(さんたんにしき)」(バチラー八重子作、立教小学校蔵・国立アイヌ民族博物館寄託)
2025年大阪・関西万博での公演の映像、舞台道具などの展示コーナー
2025年大阪・関西万博での公演の映像、舞台道具などの展示コーナー

アイヌ民族と博覧会 ―150年の経験―

  • 会期:2026年10月6日~11月29日
  • 会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B(千葉県佐倉市城内町117)
  • 開館時間:午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
  • 料金:一般1500円、大学生800円
    *詳細は公式サイトを参照

取材・文・撮影=ニッポンドットコム編集部

バナー写真:世界・食の祭典(1988年)で展示されたタペストリー「ミンタラ」(川村則子作、北海道アイヌ協会蔵)