「生きている木」に向き合った製品づくり
櫻井さんによれば、気温や湿度に応じて商品の図面も変えているとのこと。「木は生きているので、季節を通して同じ形を維持するのが難しい。湿度が高い時期であれば、閉めたときにゆるくなりがちなので少しきつめに設計したり、逆に冬など乾燥している時期にはゆとりを持った作りにしています」
湿度や気温の変化に敏感な木で作っているがゆえに、使っているうちに割れてしまう可能性もあるが、その点は事前に告知を行っている。割れた破片があればそれを使って修繕し、ない場合でも木工用パテを使って隙間を埋めるなど、アフターケアには余念がない。木の良いところも悪いところも分かった上で、経年変化を楽しみながら使い続ける。これがHacoa製品との付き合い方だ。
図面を引かずにまず作ってみる
毎月新商品を発表しているHacoaだが、その商品開発のアプローチも独特だ。「今、これをつくると面白いかもね」。そんな顧客の声や時には職人の意見にも耳を傾け、便利なだけではなく「愛着がわく」商品づくりを目指している。商品のアイデアが固まると、通常ならデザイナーがスケッチを基に図面に落とし込む。だが、Hacoaは違う。デザイナーはまずスケッチを書き起こし、すぐに試作品を作り始める。実際に作ってしまったほうが手っ取り早いだけでなく、改良すべき点などが早く認識できる。試作品ができあがると、制作スタッフ全員が集ってディスカッションを行う。改良点や価格設定などで皆が合意すると、製造工程に移行する。
スタッフがみな、スケッチを見れば試作品を形にできるスキルを備えているのもHacoaの強み。
Hacoaの直営店は、鯖江の工房に併設した「Hacoa DIRECT STORE 福井店」をはじめ、東京に3店、横浜、仙台、名古屋、大阪のほか、今年3月には中部国際空港セントレアにもオープンした。
「海外では現在台湾のセレクトショップで扱ってもらっていますが、いずれは海外で直営店を出せれば」と櫻井さん。
飾りたくなる工芸品はたくさんあっても、工芸品のごとく美しく精緻な作りでありながら普段使いできる製品は珍しい。ウェブサイトやSNSを介して海外からの問い合わせも多いという。「鯖江」発のブランドが、海外に拠点を置く日も近いかもしれない。
撮影=長坂 芳樹


