虎が追い求める夢とロマン

——監督はタイガーさんの生き方からどんなメッセージが伝わると思いましたか? 

佐藤 一つのことをずっと続けていて、それがお金のためとかではなく、自分の夢としてやっている。これって理想だと思うんですよ。そう思っていても、人は弱いですから、なかなか実行はできない。でもタイガーさんはそれをやっている。こんな人がいるんだ、っていうのを知ってもらいたいですね。

タイガー カネと権力は俺、無縁だからね。両親の遺産は、先に亡くなった弟の3人の子供に全額譲りました。元からカネに固執しないタイプなの。カネのしがらみなんて一切ないほうがいい。虎でいるっていうのはそういうことでもあるんです。

コスチュームの総重量は10キロ超。新宿テアトル控室の小さなドアも難なく(?)クリア
コスチュームの総重量は10キロ超。テアトル新宿控室の小さなドアも難なく(?)クリア

——タイガーさんは新聞を配っているけど、読むんですか?

タイガー 一面だけ、パーッと。たまに芸能面は読みますよ。政治や社会問題は関心がないんじゃなくて、一面に書いてあれば、いやでも目に入ってくるじゃない。政治面なんて、いいこと一つもないですよ。映画なら社会派のノンフィクションだって見ますけどね。つまらないと思う映画だって、見たというその体験だけでもありがたいんだ。何だって得ることはあるんです。俺は政治活動も宗教活動も一切なし。シネマと美女だけ。それが俺の信条なんだから。あとは何もありません。イッツ・ベリー・シンプル。

——今の世の中、生きづらさを抱えた若い人たちが多いと聞きます。

タイガー 暗いことを言う人がいるけど、楽しい思考が一番ですよ。ただでさえ世知辛いんだ、そんな世の中の闇に染まってったらね、ダークになっちゃうから。だから闇の中で光を見つける。かすかな光でもいいんですよ。光と闇の両刀遣いでいけばさ、無限の可能性ですよ。宇宙に行ったら人間なんてちっぽけな存在なんだから。それを面白く見せたのが『スターウォーズ』、『スーパーマン』、『スタートレック』。だから映画の世界もね、銀幕の向こうじゃないんですよ。どんなにいやなことがあっても、どんなに落ち込んでも、つらいのは全部内に秘めて、怒りという感情も情熱というエネルギーに変えて、パワーが出れば最高じゃないですか。だから暴力なんて絶対くそくらえだ。

©「新宿タイガー」の映画を作る会
©「新宿タイガー」の映画を作る会

——監督は、今回これまでとは作風の違う映画を撮って、何か得るものはありましたか?

佐藤 僕のこれまでの映画に対する考え方には、ロマンを前面に打ち出すというのはなかったですね。でも今回、僕にとってタイガーさんはロマンそのものだったので、それを描こうと思ったんです。こういう表現もあるんだなあと新しい発見でした。次の作品は、前作と同じ死刑をめぐるテーマで撮りたいと思っています。犯人の死刑執行に反対した遺族を描くところは同じなんですが、今度はそれが成功して、無期懲役から釈放にまでつながったという話です。遺族はそれを望んでいながら、結果に責任を感じるようになった。その葛藤や、赦(ゆる)しとは何かを描いてみたい。

タイガー 犯罪学とか深層心理学とかを踏まえて、こういう作品を撮るんだから大したもんですよ。今回の映画では、自分をきれいにかっこよく写して、ハートの中まできちんと見せてくれた。すごいと思います、あの映像の撮り方は。パーフェクト以上のパーフェクトだよ。まさにこれが自分、っていうのをさらにパワーアップして夢のような映像を撮ってくれたから俺もビックリ、感無量。はっきり言って天才ですよ。

佐藤 美女だけじゃなくて男にもこうですから。言われた方はうれしくなっちゃいますよね。

インタビュー撮影=花井 智子
聞き手・文=松本 卓也(ニッポンドットコム多言語部)

©「新宿タイガー」の映画を作る会
©「新宿タイガー」の映画を作る会

作品情報

  • 出演=新宿タイガー、八嶋 智人、渋川 清彦、睡蓮 みどり、井口 昇、久保 新二、石川 ゆうや、里見 瑤子、宮下 今日子、外波山 文明、速水 今日子、しのはら 実加、田代 葉子、大上 こうじ
  • ナレーション=寺島 しのぶ
  • 監督・撮影・編集・脚本=佐藤 慶紀
  • 企画=小林 良二 
  • プロデューサー=塩月 隆史
  • 制作=Aerial Films 
  • 配給・宣伝=渋谷プロダクション
  • 製作=「新宿タイガー」の映画を作る会
  • 製作年=2019年
  • 上映時間=83分
  • 大阪アジアン映画祭2019インディフォーラム部門招待作品
  • 2019年3月22日(金)~テアトル新宿にてレイトショー公開他全国順次
  • 公式サイト=http://shinjuku-tiger.com/

予告編