愛がなんだ
これもまた直木賞作家の小説を映画化した作品。角田光代が2003年に発表した恋愛小説が原作だ。28歳の会社員・テルコ(岸井ゆきの)は、友人の結婚パーティーでマモル(成田凌)と偶然知り合い、仕事などどうでもよくなってしまうほど夢中になるのだが、一方でマモルはテルコを都合のいいときに呼び出す相手としか見ていない。テルコはそれを痛いほど思い知らされながらも、マモルを追い続け、会えるのならどんな状況も受け入れる。
最近よくある恋愛映画かと思って見ると、いい意味で裏切られる。ストーリーは恋愛の成就をゴールにしていない。そもそも恋愛の成就とは、恋の終わりの始まりでもある。たとえ交際が実を結んで結婚に至ったとしても、それはもう恋愛とは明らかに違う次元への移行でしかない。この映画の登場人物たちは、どうやら恋に行方などないことをとっくに知っているようなのだ。それゆえ、相手のことを知ろうとか、相手に自分を理解してもらおう、などとは考えない。ラブコメディは常にすれ違いがあるから面白いのだが、この作品は荒唐無稽なシチュエーションで笑わせるのではなく、いかにもありそうな悩みを、独特の感性をもつ登場人物たちを通して描いていく。
角田光代が1967年生まれ、監督の今泉力哉が1981年生まれと世代は違うが、どこか通じ合う感覚があるらしい。そして二人ともこの作品を手掛けた時期はほぼ同じ30代後半だった。これをもっと若いイマドキの人が見ると、どう感じるのか興味がある。ひょっとすると原作者や監督の世代以上に、共感を抱く部分を見つけられるような気がする。恋愛は面倒とまで言う若者たちに、感傷的にならなくていい失恋の仕方もあると勇気を与えてくれそうな映画だ。
作品情報
- 出演=岸井 ゆきの 成田 凌 深川 麻衣 若葉 竜也 片岡 礼子 筒井 真理子/江口 のりこ
- 原作=角田 光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
- 監督=今泉 力哉
- 脚本=澤井 香織、今泉 力哉
- 配給=エレファントハウス
- 製作年=2019年
- 上映時間=123分
- 公式サイト=http://aigananda.com/
- 4月19日(金)、テアトル新宿ほか全国公開





