ある少年の告白
アメリカ南部の田舎町に生まれ育ったジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は、大学生になって自分が同性愛者であることにはっきりと気付く。ある出来事をきっかけに両親に打ち明けると、厳格な牧師の父(ラッセル・クロウ)は教会関係者と相談した結果、息子を「転向療法」(コンバージョン・セラピー)を実践する施設へと送り込む。若者の「ゆがんだ」性的指向や性認識は「治療によって矯正できる」との考えに基づくそのプログラムは、入所者たちの人格を否定し、断罪する狂信的なものだった。
原作は作者が19歳のときに受けた実体験を基に書かれた回想録。実はアメリカでは、カリフォルニアなど16の州とワシントンDCを除く34州でいまなお科学的根拠のない転向療法が禁じられておらず、東海岸のニューヨーク、ニューハンプシャー、マサチューセッツ各州ですら今年に入ってようやく禁止されたというから驚きだ。これまでにおよそ70万人がこの療法を経験し、うち約半数が未成年だったという。その影響で、鬱(うつ)やトラウマに苦しみ、自ら命を絶った若者も少なくない。
セラピーの陰惨さもさることながら、この映画でまざまざと思い知らされるのは、親子の関係もセクシャル・マイノリティーにとって大きな悩みとなり得ることだ。これは何もここに描かれたアメリカのキリスト教福音派の家庭に限った話ではない。親が子に結婚して子供をつくってほしいと願うのは当然のこと、などと簡単に口にしてしまうが、それは時にひどく残酷な言葉として響く。三省堂の「新明解国語辞典」(第5版)の「愛」の項に、「親子の愛=子が親を慕い、親が子を自己の分身として慈しむ自然の気持」という記述があるのを見つけて、思わず笑ってしまった。この映画はそんな「自然の気持」と闘った家族の物語だ。
作品情報
- 原題=Boy Erased
- 出演=ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エドガートン、グザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァン
- 監督・脚本=ジョエル・エドガートン
- 原作=ガラルド・コンリー
- 音楽=ダニー・ベンジー、サウンダー・ジュリアンズ
- 撮影=エドゥアルド・グラウ
- 配給=ビターズ・エンド、パルコ
- 製作年=2018年
- 製作国=アメリカ
- 上映時間=115分
- 公式サイト=http://www.boy-erased.jp/
- 4月19日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
予告編
文=松本 卓也(ニッポンドットコム多言語部)
バナー写真:©2019「麻雀放浪記2020」製作委員会






