日本を代表するクリエイティブディレクターの一人、佐藤可士和が新たに打ち出すデザインの方法論「アイコニック・ブランディング」とは何か。ブランド戦略で数々のプロジェクトを成功に導いてきた秘密に迫る。
2000年に「SAMURAI」を設立して以来、さまざまな領域でブランド戦略を統括し、成功に導いてきた佐藤可士和。これまでに依頼を受けた主なクライアントは、国立新美術館、ユニクロ、楽天、セブン‐イレブン、ホンダ、ヤンマー、三井物産、NTTドコモ、今治タオル、カップヌードルミュージアム、ふじようちえん、千里リハビリテーション病院、明治学院大学、歌舞伎・八代目中村芝翫など幅広い分野にまたがり、手がけた仕事も、ロゴ、シンボルマークやプロダクトのデザイン、広告キャンペーン、ブランディング、建築のディレクションなど多岐にわたる。
情報があふれ、多言語化も加速する世界の中で、佐藤は「ひと目でメッセージが伝わること」を重視する。そのために有効なデザインの方法論が「アイコニック・ブランディング(ICONIC BRANDING)」。ロゴ、プロダクト、空間などすべてを「アイコン」ととらえ、「言語外言語」の力で、コミュニケーションの壁を突破していくアプローチだという。これまでのプロジェクトをいくつか振り返りながら、佐藤が考える「アイコン」とは何かを探っていこう。
「日本発」というイメージ 【ユニクロ】
佐藤が手がけた世界的に有名な「アイコン」にユニクロがある。最初のプロジェクトは、2006年11月にオープンしたニューヨークのグローバル旗艦店のクリエイティブディレクションだった。これが、その後ロンドン、パリ、上海と続くユニクロのグローバルブランド戦略の皮切りとなる。佐藤は、カタカナとアルファベットで独自の「ユニクロフォント」を作ってブランドのロゴを一新した。
佐藤可士和 当時はGAPやH&Mなどアパレル産業が急速にグローバル展開していた時期。このときは、ユニクロの製品を貫く「服は『服装』の部品である」というポリシーの上に、「日本発」という核心的な表現が必要でした。僕が直感したのは、キービジュアルはカタカナだ、ということ。「しっとりとした和風」の対極にある、無機的でポップな日本の「今」です。日本人が見ても、外国人が見ても「ん?」となるような「絶妙な違和感」を狙いました。その計算が海外の街角でうまく作動したことで、自信が持てたのです。「日本発」のイメージは、フォントや色という記号でコントロールできる。そんな「アイコン」の力を強烈に感じた経験でした。
空間のブランディング 【ふじようちえん】
クリエイティブディレクションは企業戦略にとどまらない。「ふじようちえん」(立川市)では、幼稚園という空間そのものをブランディングの対象にした。このときは、旧園舎の老朽化という物理的な課題とともに、日本が少子化時代に突入し、園児募集が難しくなっているという社会的な背景があった。
佐藤 僕の仕事は、課題の解決です。何が課題の本質にあるのかをひたすら考えます。評判の幼稚園をいろいろ見て歩いて気づいたのは、幼稚園という空間にとって遊具が大事なんだな、ということでした。ふじようちえんの敷地には、立派なケヤキがあり、ツリーハウスも作られていました。上に登ってみたら、すごく楽しい気分になったんです。そこから「園舎=巨大な遊具」というコンセプトがひらめきました。ただ走り回るだけで面白い場所、子どもが毎日行きたくなるような空間――そんなグランドコンセプトを設計し、これを実現するプランを建築家の手塚貴晴さん、手塚由比さんと一緒に練り上げて、ドーナツ型の園舎が誕生したのです。
佐藤のディレクションで新しい園舎に生まれ変わったふじようちえんには、入園申し込みが殺到し、経済協力開発機構(OECD)が選ぶ世界の教育施設のアワードでは、グランプリを受賞した。
佐藤 コンセプトの明快さが、世界にも通じたのだと思います。建築も「アイコン」になる。その思いを強めました。


