企業が求める人材とは?
内定を獲得する決め手は何であろうか。学歴は、少なくともウェブエントリーの段階で選別されてしまう点で、やはり重要である。しかしニッポン企業の人物評価は、学歴や大学の成績がすべてではない。
選考の過程では、試験に加え、面接が数度繰り返される。グループ面接では、集団における協調性とリーダーシップが、また数度の個人面談で、人柄や、コミュニケーション能力、潜在的能力が見極められる。中でも重視されるのは、失敗の経験である。どのような学生生活を送ってきたのか、失敗をどのように克服してきたのかなど、将来の仕事の中で必要とされる問題解決能力が評価されるという。またあえて高圧的な態度に出て、対応力を見る「圧迫面接」も存在する。
人を見るスペシャリストである人事担当者を前に、「サークルで副代表を務めたので、リーダーシップがあります」と明るく話すだけでは説得力がない。とはいえ、短時間の面接でどこまで個人の資質を評価できるのか、能力はあるが口べたな学生はどうしたらよいのか、問題は残る。
学生が求める企業とは?
学生に人気の企業ランキングが毎年発表されるが、企業の客観的評価というより、学生が「知っている」企業のランキングにすぎない可能性もある。就活の時期になると、商品よりも企業イメージをアピールする広告が多く登場するのはそのためであろう。こうした人気企業には採用人数の数百倍、数千倍の学生が殺到する。インターネットの登場とともに、学生がエントリーする企業数も増加傾向にある。50社どころか、100社エントリーした、という話も聞く。当然、ほとんどの学生が敗退する。多くの若者が何社も相手に、この敗北を繰り返し経験するのである。人生初の挫折感を味わい、立ち直れなくなる学生も少なくない。就活は精神力の戦いでもある。
学生が敬遠するのは、「ブラック企業」である。残業が月100時間を超えるような労働基準法違反の苛酷な超長時間労働。従業員を罵倒し、マインドコントロールに近いことをするような職場。行き過ぎたノルマと成果主義…。働く場があること自体はありがたいが、苛酷な労働環境は少なくない。とりわけIT業界など、仕事が殺到し、稼いでいる企業や、創業期のベンチャー企業は多かれ少なかれ「ブラック」な要素があっても不思議はない。仕事が楽な「ホワイト企業」に就職しても、倒産しては元も子もない。
時代の変化を映す就活
就職先をめぐる親子間の断絶や、親が子供の就活に干渉してくる「親活」は、時として大学と企業の悩みの種である。なぜなら日本経済の繁栄期に育った親世代は、自分の価値観を押しつけがちであるが、これがしばしば、時代とズレているからである。親世代は、大企業、有名企業、安定志向が強く、中小企業、無名のベンチャー企業を敬遠する。「知らない会社だけど大丈夫?」、「安定した大企業の方がいいんじゃない?」という一言で、子供が内定を辞退してしまうこともある。
確かに、大企業の給与や福利厚生、またブランド力は魅力的だ。しかし、誰もが知る企業といえども、経営不振に陥る例は後を絶たない。野心のある学生は、無名だがグローバルに展開する中小企業や、ITやゲーム業界などのベンチャー企業をあえて目指す場合も多い。また経済的利益よりもエコロジーなど、多様な価値観を尊重する企業を選ぶ学生も少なくない。
近年企業を悩ませているのは、就職後すぐに辞める新人が急増していることである。せっかく採用しても新人の3割は3年以内に辞める、ともいう。しかし企業は即戦力ではなく、将来性ある新卒を採用するため採用後の教育にコストをかけている。それ故、入社2~3年で辞めることは大きな損失となる。仕事のミスを注意したら、翌日から来なくなった、という例は珍しくない。昔と異なり「ほめて伸ばす」やり方で育てられた学生は、失敗や叱責に弱く、挫折に弱い。甘やかされて育ったから忍耐力が足らない、というのは中高年の弁。ハラスメントを受けた、仕事ばかりではなく生活を充実させたい、会社が倒産しても食べていけるように専門性を身につけたい、など若者にも言い分はある。
日本人の特徴とされた昭和の頃の愛社精神や滅私奉公といった姿勢は、もはや過去の遺物となり、転職も珍しくはなくなった。しばしば指摘されるように、今日、成長分野を牽引する企業は、学生たちが生まれた頃には存在していなかった。時代は大きく変化している。無名であっても、小規模であっても「明日のソニー」を見いだした学生か、会社が倒産しようとも、転職を重ねようとも、対応できる人材が、未来の勝ち組かもしれない。働くことの価値と選択肢は多様化しているのである。
就活には、日本社会の変化が凝集されている。人気企業の栄枯盛衰。日本人の働き方の変化や、世代間のコミュニケーションギャップ。もはや親レベルの豊かな生活を送ることはできない、と認識している若者が多いという。確かに非正規雇用の増加や、引きこもりの増加・高齢化に加え、一度ルートを踏み外すと元に戻りにくいことなど、日本社会が抱える問題は深刻である。人手不足社会でありながら柔軟性を欠いた労働のあり方を学生が不安に思うのも無理はない。就活生は、日本経済の変化と働き方をめぐる価値観の多様化に向き合っているのである。(2016年4月20日 記)バナー写真:合同企業説明会に集まる就活生=2016年3月、東京都江東区の東京ビッグサイト(時事)
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