「天然独」が香港で出現
特に重要なのは、台湾と香港におけるアイデンティティーの変化である。台湾においては「中国アイデンティティー」から「台湾アイデンティティー」への大掛かりな転換が、この20年ほどの間で、ゆっくりと着実に変化した。これを「台湾化」あるいは「本土化」と呼ぶことができる。台湾の政治大学選挙研究センターの調査では、1992年に調査を始めた時は「中国人」「中国人であり台湾人」とする回答が全体の4分の3を占め、「台湾人」との回答は19%に過ぎなかった。それが2015年には「台湾人」という回答は60%を超え、「中国人であり台湾人」が33%、「中国人」が3%になってしまった。
一方、香港でも香港大学民意研究プロジェクトの調査(2016年6月)によれば、自身を「香港人」と考える人は67.0%(2006年調査では49.9%)であったのに対し、逆に「中国人」と称する者は30.7%(2006年調査では49.5%)に達した。アイデンティティーの面でも「若者の中国離れ」が着実に進行しており、香港アイデンティティーは、台湾アイデンティティーの動きを10年遅れで追いかけているように見るのが自然である。
香港や台湾の若者のアイデンティティー問題に詳しい台湾の中央研究院の林泉忠副研究員は、台湾において「民主化後に育ち、台湾が台湾であることを疑わない、生まれながらの独立派」と定義される20代、30代の「天然独」世代が台頭し、今回の民進党勝利にも貢献するなど政治的に無視できない勢力となっている状況が、香港においても「港独」の主張の台頭とともに出現しつつあると指摘している。