数々の受賞を経て活動の幅を広げる

「我庄」はこの年、台湾のもう一つのメジャーな音楽賞である「金音奨」の最優秀アルバム賞、音楽家賞(六弦月琴、林生祥)、審査員賞の三賞を獲得し、生祥楽隊を台湾のメジャーシーンへと一気に押し上げた。2017年には、台北映画祭のグランプリ受賞作品「大仏+(原題:大佛普拉斯)」の音楽を林生祥が担当し、大竹も編曲と演奏に加わったエンディング主題歌「有無」が映画賞「金馬奨」の最優秀オリジナル映画楽曲賞を受賞した。

大竹研が参加したアルバム(大竹研撮影)
大竹研が参加したアルバム(大竹研撮影)

生祥楽隊の活動と並行して、14年には、大竹は早川とドラマーの福島紀明とのジャズトリオ「東京中央線」の活動も始める。彼らの自由闊達(かったつ)な演奏は、台湾や香港の聴衆からも、新鮮な驚きをもって迎えられた。そして、ドラマーの福島も15年から生祥楽隊に加わった。

18年には、大竹自身の教え子でもあるアイリーン・チェン(陳彥伶)のミニアルバム「Born To」の制作に参加、またバンド活動や他のアーティストのサポートの傍ら、ギター1本でのソロライブも年間30本ほどこなし、台湾各地を巡った。これまで先人から受けた恩を今度は後進に「恩送り」する側に回るようになり、バンドの中では脇を固める役回りに徹していた大竹が、自ら主役を演じるようにもなった。

さらに、平安と10年以上の時を隔てて「台北ジャズフェスティバル」の舞台で共演も果たした。経験を重ねた今だからこそ奏でられる音がある。大竹は恩師との再会をギターの演奏で心ゆくまで楽しんだ。そして、台湾でレコーディングされた平安の新譜「雲遊び」が2019年3月末に台湾で発売、日本でもリリースされることになっている。大竹が平安のためにプロデュースした作品だ。平安と出会ってから16年、アルバムの制作という形で師への最高の恩返しを果たせることになった。

大竹のギターは「無色透明の水や甘い香りのシングルモルトウイスキーのようだ」と評される。どんなジャンルの音楽でも、どんな個性のミュージシャンとも、その形に合わせて変幻する。それが大竹のギターの最大の特徴であり、魅力でもある。だが、これからの大竹はどこに向かうのか。

「生涯ミュージシャンであり続けること、そして『看板』に自分の名前が載るようになることです。『自分とは何ぞや』と問い続けながら、常にギターを通して自分と向き合い、自分を磨くことです」

ギターとひたすら向き合う現在の大竹には求道者の風格すら漂っている。平安に導かれ、林生祥に受け継がれた縁で大竹は台湾に根を下ろしている。自身のソロアルバムのタイトル「似曾至此(I Must Have Been There)」の通り、彼はここにいるべくしているのだ。

大竹研(山下民謡提供)
大竹研(山下民謡提供)

バナー写真=大竹 研(山下民謡提供)