トイレのにおいは時空の連結点
台南郊外の旧永康市で生まれ育った魏徳聖さんは興味深い思い出話をたくさん聞かせてくれた。魏さんが選んだスポットの一つは「台鉄台南駅」。特に思い入れが強いのが、なんと構内に漂う「尿のにおい」だという!
「中学生の頃から21歳までの間、アルバイトや空手の練習のために、ほとんど毎日台南駅を利用していた。台北に引っ越して、高鉄(新幹線)ができてからはめったに来ることがなくなったけれど、半年くらい前のある日の夜、久々にロビーで電車を待っていたとき、ふと気が付いたんだ。駅の建物も、そこに漂うにおいも、あの頃からまったく変わっていないと。そのにおいとは、つまるところトイレからロビー全体に漂ってくる尿の匂いだ。それは僕にとって、ある種の時空の連結点なんだよ。」
そういうわけで2017年の秋、魏さんと筆者は懐かしのにおいをひとかぎするべく台南駅を訪れた。ところがどうしたことか、いくら歩いてもそれをかぎつけることができない。ちょうど線路の地下化に伴う駅の大規模な改築工事が始まったばかりで、トイレの入り口は封鎖されていた。工事は2022年末まで続くそうだ。ぼくらは失意を胸に、もう一つのトイレで並んで用を足し、トイレの前で記念写真を撮った。