韓国瑜氏から見えること

韓国瑜氏の態度とスタイルが、最終的に高雄でポストを失う原因になった。過去の日本でも多くの政治家の発言が問題視されたが、韓氏のような言語感覚の持ち主はほとんどいなかった。かつてあるメディアが韓氏の話し方は橋下徹前大阪市長に似ていると評したことがあった。しかし、橋下氏は少なくとも日本の司法試験を突破した法曹のエリートで、38歳の若さで、大阪府知事に初当選した。橋下氏は舌鋒鋭いが、基本的にはやはりエリートの思考で物事を論じる政治家に属する。

仮に比較をするのであれば、韓氏のスタイルは「れいわ新撰組」の山本太郎氏に少し似ているかもしれない。両者とも型破りな政治家だからだ。筆者はかつて2019年の参議院選挙で現場取材を行った際、山本氏の演説力を目の当たりにした。コメディ役者出身の山本氏は、韓氏と同様、その場の雰囲気づくりや人々の心をつかむことに長けていた。二人ともポピュリストスタイルの政治家だ。ただ、山本氏が将来成功した政治家になると言えるのか、必ずしもそうとは限らないだろう。

以前、韓氏の選挙戦で、筆者はいわゆる「三山造勢」と呼ばれる動員集会を取材したことがあった。当時現場には日本人記者もいて、「韓国瑜氏は横山ノック氏に少し似ている」と言っていた。横山氏はコメディアン出身で、舌鋒鋭く、知名度も高かった。参議院議員に当選後、大阪府知事に当選したが、セクハラスキャンダルで辞職して有罪判決を受け、数年後に病気で世を去った。韓氏と同様、横山氏も「一世風靡(ふうび)」型の政治家だ。

SNS(会員制交流サイト)による情報拡散が高速化し、政治全体の新陳代謝も非常に速くなっている。以前は政治家の賞味期限は任期の4年と言われていたが、今では韓氏によって2年に満たないことが証明されてしまった。韓氏の罷免は、今後、台湾で民意にそぐわない政治家はリコールに直面するというリスクを見せつけた。一旦、ポピュリズムに流れしまうと、民主主義の成長にとっては好ましくないだろう。

ただ、台湾で将来、いくら解職請求が増えても、10年、あるいは20年のうちに罷免される政治家はもう現れないかもしれない。なぜなら賛成票は必ず不賛成票を上回る必要があり、今回の罷免賛成票の多さは中国からの圧力と韓氏自身の言動や振る舞いが重なって起きた必然的結果だからだ。この問題から日本社会が受け取るべきことは、台湾人が再度、「中国」と距離を置いたことと、韓氏はかつて日本の政治史上にも出現した線香花火のような政治家であったということだ。韓氏のような政治家がなぜ現れたのか我々は冷静に考え直してみなければならない。

バナー写真=前高雄市長の韓国瑜氏は市長罷免を問う住民投票で94万票近い賛成票を集め罷免が成立した。2020年6月6日、台湾高雄市(高雄市政府提供)