次なる夢は、地球を超えて—宇宙食ラーメンの開発
カップヌードルが大ヒットすると、各国のメーカーが続々と参入し、「インスタントラーメン」という新ジャンルが世界中で確立した。安藤は「業界内の競争と切磋琢磨があってこそ企業が成長する」と考え、特許を独占せず、広く使用許諾を与えた。これが巨大な市場を生む要因となり、結果として日清食品自体の成長にもつながった。
成功を収めても、その探究心は晩年まで尽きることはなかった。2001年、安藤は91歳にして「宇宙食ラーメン」の開発を宣言し、自ら陣頭指揮を取った。スープにとろみをつけ無重力状態でも飛び散らないようにするなど工夫を重ねた新製品「スペース・ラム」は、05年7月に野口聡一さんが搭乗するスペースシャトルに搭載された。
受け継がれていくチャレンジ精神
2007年1月5日、安藤百福は帰らぬ人となる。96歳。日清食品の初出式で「年頭所感」を発表した翌日のことだった。ニュースは世界を駆け巡り、米紙ニューヨークタイムズは「ミスターヌードルに感謝」と題する社説を掲載した。
生涯を閉じる瞬間まで現役を貫いた安藤。本社の会長室の裏には調理場があり、常に商品開発に励んでいたという逸話も残る。多くの名言も残したが、最も知られているのは伝記のタイトルにもなったこの言葉であろう。
「転んでもただでは起きるな。そこらへんの土でもつかんで来い」
自らが逆境を乗り越えてきたからこそ、この泥臭く、厳しく、温かい言葉は、人々の胸を打つ。そして、新しい挑戦を続ける人々にも確かな勇気を与えてくれる。
取材協力・写真提供=日清食品ホールディングス株式会社 参考=安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな!』(中公文庫) 取材・文=山口 紀子 撮影=山崎 純敬


