実在の文豪と同じ名を持つ登場人物たちが、文学作品にちなんだ異能力を駆使する『文豪ストレイドッグス』。アニメ放送10周年を記念し、作品の主要舞台のモデルでもある横浜の神奈川近代文学館で企画展が開かれている。キャラクターを入り口に、その背後にある近代文学の世界をたどることができる。
文豪と同名の異能力者
『文豪ストレイドッグス』(朝霧カフカ原作、春河35作画)は、マンガ誌『ヤングエース』連載中の異能バトルアクションだ。2016年にアニメ化された。孤児院を追われた主人公の青年「中島敦」が、武装探偵社の「太宰治」や「国木田独歩」らと出会い、異能力者を巡る事件に巻き込まれていく。
異能力とは、常識を超えた現象を起こす力のこと。例えば「中島」は異能力「月下獣」を使い、体を巨大な白虎に変える。人間が虎の姿になる中島敦の短編『山月記』にちなんだ設定だ。
展示では、登場キャラゆかりの文豪30人のコーナーを設け、実物の文学資料140点(うち文学館所蔵は120点)を並べているほか、アニメ『文豪ストレイドッグス』の関連コーナーもある。
中島敦のコーナーに展示された『山月記』関連草稿断片には、「自尊心にいつもこの羞恥心がくつヽいてゐるんだ」と記されている。『山月記』の「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」という有名な表現につながったと考えられる一節だ。このフレーズは、自己を肯定できずに苦しむマンガ・アニメの主人公「中島」の心境にも重ねられる。中島敦旧蔵の『猛虎図』(中島春城画、1935年)も掲げ、マンガ・アニメで躍動する白虎をイメージしながら楽しめる。
現実の「文豪」の生きざまを知る
太宰治の資料としては、本人の文字が記された名刺が展示されている。作品の執筆を巡り編集者や出版社とやりとりをした、現実の作家としての姿が浮かび上がる。
他にも国木田独歩、江戸川乱歩、芥川龍之介、中原中也、谷崎潤一郎、与謝野晶子、宮沢賢治、森鷗外などキャラクターにゆかりのある文豪のコーナーが続き、それぞれの姿をイメージできるように工夫されている。
夏目漱石のコーナーでは、原稿用紙版木を紹介。新聞小説の文字数に合わせた特注原稿用紙の印刷に使ったもので、当時の創作風景を物語る。
アニメ、さらに舞台へ広がる作品世界
アニメや舞台の資料も充実している。エントランスでは大画面で「300秒でわかる文豪ストレイドッグス」と題した映像を上映。等身大パネルの前で写真撮影をして世界観に入り込める。展示室では、アニメの原画やアフレコ台本、舞台化の際の衣装や小道具などが90点並び、作品の独特の雰囲気に浸ることができる。
会場となる神奈川近代文学館は、横浜港を望む「港の見える丘公園」にある。横浜は『文豪ストレイドッグス』の主要な舞台のモデルになった土地で、アニメに登場する風景も展示している。
神奈川近代文学館と『文豪ストレイドッグス』の関係は長く、2014年の太宰治展を皮切りに、谷崎潤一郎、与謝野晶子、中島敦などの展覧会でコラボレーションを続けてきた。今回の「十周年記念展」は、その積み重ねを発展させた内容でもある。
併設の「鮨喫茶 すすす」では、記念展とコラボした期間限定のメニューも。文豪が愛した味覚や作品世界を感じさせる食材を使った海鮮丼、芥川龍之介の作品『羅生門』をテーマにしたプリン、太宰治の『人間失格』の一節にちなんだ電気ブランのハイボールなどが楽しめる。
アニメ『文豪ストレイドッグス』十周年記念展~文豪とのゼイタクな邂逅(かいこう)~
- 会場:神奈川近代文学館(横浜市中区山手町110)
- 期間:2026年6月6日(土)~7月12日(日)=月曜休館
- 時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 観覧料:一般800円、65歳以上・20歳未満・学生400円、高校生100円、中学生以下無料
- 入場方法:土日は日時指定制(一般はローソンチケット、そのほかは公式HPから申し込む)。平日は当日券あり(各時間定員制、公式HPから予約可能)
- アクセス:みなとみらい線「元町・中華街駅」6番出口徒歩約10分
- 展示会公式HP:https://www.kanabun.or.jp/exhibition/27729/
※写真:提供以外はnippon.com編集部 松本創一撮影
バナー写真:アニメ『文豪ストレイドッグス』十周年記念展











