「貼って剥がす」へのこだわり

「mt」人気に火をつけた第1回の「mt ex展」以降も、同様の展示会が継続的に行われている。他にも、全国のステーショナリー、インテリア雑貨ショップなどで開催されるワークショップ付きのイベント、毎年3月下旬に倉敷本社で開かれる「mt factory tour」は常に大盛況だ。

今年で6回目を迎える「mt factory tour」では、2週間の期間中の来場者は約1万2000人。事前申し込みが必要で、抽選倍率は約3倍だ。テープの巻き取り・切断・包装までの工場見学、過去に発売された約3000アイテムもの「mt」製品展示、この期間だけの限定テープ発売など、特典多数の “イベント詣” はファンにとっては「聖地巡礼」の感覚なのだろう。

本社敷地にある「カモ井史料館」の展示。創業当時の製品には蚊取り線香もあった
建築用や車両塗装用マスキングテープなど工業用テープを長年作り続けてきた
発売当初は20色だった「mt」。年3回新商品が発売され、今ではバリエーションの豊富さが大きな魅力となっている
「mt」で覆われた空間はさながら“おとぎの国”だ
「mt」のロゴ入りシールを最後に貼って製品は完成する
1点1点、丁寧に検品を行う

「mt」人気が加速するにつれ、競合製品も増えてきた。いまや「100均ショップ」でもかわいいマスキングテープが手に入る。だが、岡本さんはこう胸を張る。

「マスキングテープ売り場にはさまざまなメーカーの商品があふれていますが、『mt』は建築現場のような厳しい環境で使用されている工業用製品と同じ品質で作っています。薄くても強度のある和紙、しっかり貼り付くのにきれいに剥がせる粘着剤という相反する品質バランスが重要なんです」

「貼って剥がす」という本来の役割にこだわったクオリティーの高さと、年3回発売される新商品や限定品などバリエーションの豊富さは、海外のファンも魅了している。

「パリの展示会に出展したのを機に、ヨーロッパのセレクトショップやミュージアムショップで扱われるようになりました。アジアでは台湾での人気が高いですね。台北のほか、北京や上海、香港でもイベントを実施しています。ヨーロッパのファンは『mt』を “日本の文化” として捉え、和柄が人気。アジアは女性のファンが多く、ネコや花などかわいいデザインの人気が高いように感じます」

「マステ柄」のネイルも

「mt」は発売10年目を迎え円熟期に入っているが、3年前に発売した、壁や窓ガラスなどに貼るインテリア用のマスキングテープ「mt CASA」の人気が最近大きく伸びている。

「広幅のテープを貼る時にシワが入りにくいようフリース素材を使ったタイプもあります。こちらの予想以上に多様な使われ方をしていますね。『mt』を爪の形に切って貼り、上からコーティングしてマステ (マスキングテープ) 柄のネイルを楽しんだり、UVレジン(合成樹脂)を使ってアクセサリーに仕上げたり、お客様から新しい使い方を教えてもらうことが多いです」と岡本さん。

ファンが「mt」で作った作品はInstagramを中心にSNSでも活発に投稿されている。いろいろなモノにアレンジしたくなる、オリジナルを作りたくなる、そして人に見せたくなる。SNSの台頭にも支えられ、「mt」は文具の枠を超え、今や自己表現のツールになった。

「mt」で楽しむネイルアート(提供:カモ井加工紙)
2016年には岡山県倉敷の大原美術館と「mt」の期間限定コラボも実現した

(2017年7月14日 記)

撮影:木村 琢磨