摂政も臨時代行も象徴ではない

⑥今の皇室制度では、天皇の「生前退位」は認められていません。天皇が崩御した時に限って、皇位継承順位に従って自動的に次の天皇が即位する仕組みになっていて、天皇は、生涯引退できない立場にあります。こうした制度のもと、天皇が重い病気で国事行為にあたれない場合などに限って、代役を務める「摂政」を置くことが認められているほか、一時的な体調不良や外国訪問などの際には、皇太子などによる「国事行為の臨時代行」が行われています。

※現行の憲法も「皇室典範」も、終身在位を前提として、天皇が回復不能な重病などになれば、代役の「摂政」を置くとか、昭和39年(1964)公布の法律により、一時的な「国事行為の臨時代行」ならば、皇太子などに委任できることになっている。

⑦明治時代半ば(編注:1889年)、大日本帝国憲法とともに定められた旧皇室典範で、天皇の譲位が強制されて政治的混乱を招いた時代があったことなどを理由に、皇位の継承は天皇の崩御に限られました。これは、戦後制定された今の皇室典範にも引き継がれました。宮内庁は、天皇の「生前退位」が認められない理由について(中略)恣意(しい)的に退位する懸念もあるなどと説明してきました。

※明治と戦後の「皇室典範」とで、皇位の継承が「天皇の崩御に限られ」たのは、前近代史上の「生前退位」が「強制」や「恣意」による恐れもあったと考えられたからである。

皇室典範の改正すべき2点

⑧退位の実現に向けて、考えられるのは、皇室典範を改正して、天皇の生前退位を制度化することです。一方で、制度化までしなくても、とりあえず天皇陛下の意向を実現できるよう特別に法を整備することも十分に考えられます。どのような場合に生前退位が認められるかなど検討すべき課題は多岐にわたるとみられ、いずれにしても、国会の場に諮(はか)られることが必要になってきます。

※現行法にない「生前退位」を実現するには「皇室典範」の第四条を改正して制度化するかのが本筋であるが、当代限りの特別法を作る方法も考えられる。ただ、いずれも国会で議論しなければならないことである。

⑨皇室典範で、皇太子は皇位継承順位が1位の「天皇の子」(皇男子)とされています。皇太子さまが天皇に代わって即位されると、弟の秋篠宮さまが、皇位継承順位1位に繰り上がりますが、皇太子にはなられません(中略)このため、天皇陛下の退位に関する検討が始まれば、秋篠宮さまをどう位置づけるのかも、にわかに検討の対象となってきそうです。

※現行の「皇室典範」は、第一条で皇位継承資格を「皇統に属する男系の男子」に限定し、第二条で継承順位を直系・長系・長子優先と規定している。しかし、その直系・長系に皇男子孫が誕生することを前提として、第八条に「皇嗣たる男子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という」としか定めていない。従って、新天皇の弟君の秋篠宮殿下は、皇位継承の順位が1位になっても、「皇嗣たる皇弟」と位置づけられていないので、このままでは「皇太子が不在になる」から、第八条の改正も避けて通れない。