ネットでつながり、リアルも
増澤 IVSにしろICCにしろ、日本におけるVC主導の起業家を対象とするイベント(カンファレンス)は基本的に招待制で、クローズドな、顔見知りの中で回しているような印象も受ける。自分もコミュニティの中に入りたいという起業家たちはどのようにすればいいのか。
堀 ベンチャー村の定義にもよるが、必ずしもクローズドなコミュニティだけではない。今は毎日のように大手町でも六本木でも渋谷でも、スタートアップ関連のイベントが開催されている。ビットコインなり人工知能(AI)なり、モノのインターネット(IoT)、マーケットプレイス、さまざまなものがある。そういう場に足しげく通うことによって、簡単にそのようなコミュニティに入れるのではないか。
ただ、そうはいってもVCが投資を決める際には起業家への信頼、信用、過去のトラックレコード(*2)が重要になる。その際には、知っている人、業界でよく知られている方から紹介された人の方が、ハードルが少し下がるというのはある。
川邊 ネットの上ではいくらでも知り合うことができるのだから、基本は完全オープン。ツイッターを通じてだけで「共同経営者になりませんか」という話が決まることだってある。その中で「リアルに足を運ぶ」という段階や、リアルでクローズな付き合いも出てくる。だから、全体で閉鎖的というのは全くないのではないか。若い人たちは、そのようなコンファレンスに行かなくても、VCにはネットでアクセスできると話す人もいる。
増澤 ということは、日本語という問題がクリアできれば、海外の人も十分日本のベンチャー・コミュニティーに参加できると考えていいか。
川邊 それは問題ないと思う。ただ、東京という極端に大きい都市という特性はあるかもしれない。連日連夜いろんなことが起きているから。それらに足を運べる東京に住んでいて、日本語がある程度できるのならばオープンに参加可能な状態ではないか。
何度でもチャレンジできる環境を
増澤 「顔見知りになるとやりやすい」という点が長所としてあるとすると、日本のベンチャー・コミュニティーがどのようになっていくことを望むか。米国ではPaypalマフィアのような存在があるが、日本でもヤフーをはじめ、今後のベンチャー人材を多く輩出する企業が出てくるのではないかと思うが。
川邊 やはりトラックレコードが蓄積されていくことは重要ではないか。アーリー(起業の初期)であればあるほど、その事業がうまくいくかいかないかは「時の運」である可能性が高いので、事業プランや収支計画は必要だけれども、結局は(投資を決める際に)「人に張る」という要素が強くなる。エコシステムがあるからこそ何度でもチャレンジが出来て、トラックレコードがたまっていって、企業家にしてもVCにしてもエンジェルにしても、それを参考に事業を進めるかどうかの判断ができるようになる。成功の再現性も高くなるのではと思う。
堀 エコシステムとして米国に比べて遅れている点として、日本では一回起業してEXITして、もう一度起業するというモデルがまだ少ない。今回、山田進太郎氏が間もなく(メルカリを)上場するが、一つのロールモデルになるのではと思う。「STORES.jp」をやっていた光本勇介氏も「バンク」を始めたり新しいことにチャレンジしたりしている。こういう若い方たちが起業したりチャレンジしたりというのが増えると、よりいいコミュニティになっていくのではと思う。
また、片桐孝憲氏の例などは面白い。彼はもともとピクシブというスタートアップの社長をやっていた。このサービスは日本のみならず海外からもとても人気のあるサイトだ。その彼が、突然、DMMという大きな会社にスカウトされ、そこの社長をやることになった。ピクシブも素晴らしいスタートアップだがDMMはネット業界随一の収益規模を誇るといわれる大企業だ。そういったダイナミックな人事、経営をしていく企業が日本ではまだまだ少ない。これらの動きが活発化していけば、産業自体が強くなっていくのではないか。

