児童福祉司の「国家資格化」は現実的か
3月19日、政府が閣議決定した児童虐待防止法・児童福祉法改正案(文末参照)では、「しつけの際に体罰を禁止する」と明記した。民法の懲戒権に関しては、施行後2年をめどに検討することになっている。
また、心愛ちゃんの事案で市の教育委員会がアンケートを父親に見せてしまったことを受けて、「児童の秘密を漏らしてはならない」という守秘義務も規定した。その他、児相職員の役割分担や「常時」弁護士の助言・指導を受けるなどの規定に関しては運用次第という面もあるが、おおむね同意できると宮島教授は言う。一方、児相の体制強化の動きで最も懸念しているのは、職員である児童福祉司の専門性を高めるための「国家資格化」を巡る論議だ。改正案では、法の施行後1年をめどに、児童福祉司の「資格の在り方」を検討すると規定している。
「仮に新たな資格ができても、養成するための体制作りには時間がかかる上、そもそも学生が集まらない可能性がある。児相は24時間365日通告を受け付け、対応しなければならない過酷な職場なのに、現状では待遇面でも恵まれていないからだ。また、児童福祉司の仕事は経験値が大事で、最低でも3~5年、後進を育てるレベルになるまでには10年はかかる。分かりやすい方策として新しい資格創設を前面に置くことで、地味でも必要な取り組みが置き去りにされる恐れもある」
「現在、(国家資格の)社会福祉士の職員は児相で4割程度、市町村はもっと低い。資格がスタートラインや土台にすぎないことは社会福祉士でも同じだが、まずは、児相、市町村が社会福祉士の採用を増やすことから始めるのが現実的だろう」
子どもを地域社会が守り育む環境づくりを
また、母親と子どもを一緒に保護する仕組みを整備し、最大限に活用することが必要だと宮島教授は言う。
「配偶者によるDVと児童虐待はリンクしている。基礎自治体の対応を充実させて、包括的な支援を進め、母子を分離しないで支援することが大事。命が危ないDV案件などは母子ともに保護できる仕組みを積極的に運用していく必要がある。母子生活支援施設を最大限に活用するとともに、経済的な安定を支える施策の充実や子どものショートステイなども増やすべきだ。それで守れる事案はたくさんある」
最後に忘れてならないのは、地域社会全体で子どもを守り、育てていく視点だと宮島氏は力を込める。「結愛ちゃん、心愛ちゃんの弟、妹のように、残された子どものことを含めて『社会的養護』のこれからを切り開いていく必要がある。さまざまな悲しみを抱える子どもを受け入れて共に生きようとする姿勢、そのような生き方を共有できる地域社会を築き得るのかが問われている」
■法改正の概要(成立の場合、施行は20年4月から)
- 親権者や児童福祉施設は子どものしつけの際に体罰を禁止する
- 児童相談所で一時保護など介入的対応をする職員と保護者の支援を行う職員を分ける
- 常時、弁護士の配置または準じる措置を行う。医師と保健師を配置する
- 政府は、施行後5年をめどに中核市および特別区が児童相談所を設置できるよう支援する
- 学校や教育委員会、児童福祉施設の職員は児童の秘密を漏らしてはならない
- DV対策との連携強化のため、配偶者暴力相談支援センターなどは児童虐待の早期発見に努める
【検討規定】
- 施行後2年をめどに民法の懲戒権の在り方を検討
- 施行後1年をめどに、児童福祉に関する資格の在り方などを含め資質向上策を検討
取材・文:板倉 君枝(ニッポンドットコム編集部)/バナー写真:PIXTA