日本の競馬ファンは「真のサポーター」

——通年の騎手免許を取って2年目。日本に住むようになってどうですか?

京都は栗東(滋賀県の栗東トレーニングセンター)に近いし、フランス人学校があるから、子どものいる僕には完璧。美しい街だし、暮らしやすいね。京都のスタイルが好きなんだ。東京に比べて伝統が強く残っていて、古い建築や街並みがいい。来てすぐの頃は、有名な観光地ばかり訪れたけど、いまは小さな裏通りを散歩して、あまり知られていない小さな寺とか庭園を発見するのが楽しいよ。

——お子さんたち(男の子11歳、女の子9歳)は日本の生活に慣れましたか?

最初はフランスに帰りたいと駄々をこねることもあったけど、「帰るって? ここが僕たちの家なんだよ!」と言い聞かせた。今は友達もできたし、食事にも慣れたね。毎日レースがあったフランスと違って、平日は子どもと過ごせる。宿題も見るし、学校への送り迎えもするよ。フランスにいるときよりリラックスして、自由を感じられるね。街で誰かが僕に気づいても心配ない。日本の人たちが僕に接する態度には、いつも優しさと敬意があるからね。僕も家族もこの国に受け入れてもらっていると考えているから、それに最大限応えて、周りの人々やしきたりを尊重して、溶け込もうと努力している。そうすることで、すべてがうまく行って、何の問題もないんだ。

——日本にはあとどれくらいいるつもりですか?

騎手として活躍できる体力があって、レースに勝てるうちは居続けたいね。50歳まで現役を続けるジョッキーも少なくない。その後のことはわからないな。メディアの仕事もいいね。競馬界の発展に貢献できることをしたいとは思っている。日本とフランスの競馬界の橋渡しのようなことができるかもしれないね。

——では、日本の競馬が世界に誇る魅力があるとしたら何でしょう。

まず、日本は競馬場に来てくれるファンの数が圧倒的に多いね(*5)。フランスでは、家や近所のカフェで観戦するのが主流だし、どうしてもギャンブルというネガティブなイメージが根強い。日本はその点、常に新たなファン層を獲得するために、JRAがイメージアップに努力している。最近のCMでは、人気タレントを使って、20代の女性、30代の男性、60代の男性の3人組が競馬を楽しむ姿を見せているよね? これが大事なんだ。欧州では、おじいちゃんたちの趣味でしかないから、この先どうなるんだろうという不安がある。日本の競馬ファンは本当の意味でのサポーターだね。競馬を正真正銘のスポーツと考えて、馬、ジョッキー、調教師を応援し、尊敬してくれるんだ。日本人の競馬の楽しみ方は素晴らしいよ。これほど熱狂的に楽しみ、応援してくれる国はないね。だから僕らジョッキーも、ファンの期待に応えることで、大きな喜びを感じることができるんだ。

インタビュー撮影=コデラケイ
フランス語インタビュー・文=松本 卓也(ニッポンドットコム多言語部)

(*1) ^ 3歳馬に限定した中央競馬の伝統的なGIレース。皐月賞、桜花賞、優駿牝馬(オークス)、東京優駿(日本ダービー)、菊花賞の5つ。

(*2) ^ 毎年5月末~6月頭に実施される3歳馬対象のGIレース。正式名称は「東京優駿」。皐月賞、菊花賞とともに「三冠レース」のひとつ。

(*3) ^ 1973年フランス生まれ。世界を代表する騎手の1人。1995~2008年に短期免許で来日し、数々の重賞を制覇した。

(*4) ^ JRAが外国人騎手を対象にした試験は、一次が英語の筆記試験、二次は日本語の口頭試験。

(*5) ^ 2016年、日本ダービー当日の入場者数は13万9140人を記録。