豊受大神と真名井神社

皆さんは、日本人のかつての心のふるさとが三重県伊勢市にある伊勢神宮だったことをご存じだろうか。伊勢神宮外宮(げくう)でまつられている豊受大神はもともと、丹後地区の重要な神だった。伊勢神宮に遷座したのは約1500年前。それまでは天橋立にある籠神社(このじんじゃ)の奥にある真名井神社でまつられていたという。真名井神社の境内には、古い祭祀(さいし)の場である磐座(いわくら)がいくつかある。ここはかつて豊受大神、天照大神、イザナギ、イザナミの四大神をまつる神社だった。天照大神と豊受大神が相次いで伊勢神宮に遷座した後に真名井神社も山のふもとに移り、現在の籠神社になった。歴史の古い籠神社の建築様式は、伊勢神宮と同社だけという神明造であり、本殿の欄干を飾る「五色の座玉(ごしきのすえたま)」も伊勢神宮と同社だけのものだという。

真名井神社内の磐座(撮影:林 亦峰)
元伊勢籠神社(撮影:林 亦峰)

日本三景の天橋立

籠神社の前にある天橋立も日本神話と密接な関係のある場所だ。『丹後風土記』には天橋立はもともと、イザナギノミコトが天から地上に降りる際に使ったはしごだったとの記載がある。そのはしごが倒れて現在の姿になったとされる。天橋立は約3.6キロメートルの砂州であり、約8000本の松が自生している。天橋立は広島の宮島、宮城の松島と並ぶ日本三景とされており、京都府北部で最も重要な景勝地だ。

天橋立の景観を眺めたいと思ったら、籠神社に近い傘松公園に行くのもよい。傘松公園は海抜130メートルの場所にある展望所だ。ここから海上に横たわる天橋立の姿を見ることができる。普通に眺める以外にここで流行しているのは、腰を曲げて自分の両脚の間から見ることだ。天橋立が天空の浮島を結ぶ天の橋のように見える。この「股のぞき」については研究対象にもなった。逆さに見ることで遠近感が変化するのでは、とのテーマだった。そしてこの研究は2016年、イグ・ノーベル賞の「知覚賞」を受賞した。

天橋立の松林(撮影:林 亦峰)
傘松公園からの天橋立を展望する(撮影:林 亦峰)