時代にもてあそばれた台湾の戦士たち
ここでは時代に翻弄された台湾人兵士の足跡が展示されている。戦後の台湾社会において、日本軍に従軍経験のある元兵士の存在が顧みられることは少なかった。展示館はこうした元兵士の処遇について調査した許昭栄氏の尽力で設けられた。
許氏自身も日本軍に従軍し、戦後は国府軍に入隊した経験をもつ。そして、似た境遇の仲間を支援したり、実態を調査したりして、私財を投げ打ってこの問題に取り組んだ人物である。
台湾人は日本統治時代末期に軍人・軍属として戦地に送られている。その数は合わせて20万7000人に及ぶ。そして、戦後に新たな統治者としてやって来た中華民国政府によって、多くの元日本軍兵士が国府軍に徴用された。
周知のように、第二次世界大戦後、中国では蒋介石率いる国府軍と毛沢東率いる共産党軍の内戦が勃発(第二次国共内戦)。戦闘は長期化し、国民党政府は兵力不足に悩むようになった。
台湾を勢力下に置いた彼らは、甘言を弄(ろう)して台湾人の兵士を集めた。元軍人・軍属だった彼らは、日本軍による教練を受けており、即戦力となった。そのため、重宝されることとなる。高雄市在住の梁啓祥氏が語るように、敗戦後の混乱期、台湾の青年たちに選択肢はなかった。梁氏もまた、生き抜くために国府軍に志願し、2度目の従軍を経験した。
1947年に「二二八事件」が勃発した後は、日本統治下で軍隊経験のある青年が反政府運動に従事していると言い掛かりを付けられることが増え、そういった弾圧から逃れるために国府軍に志願したというケースもよく見られた。時には、半ば強制的に徴用されるケースもあったという。
