新たに注目を集める王育徳記念館
日本と台湾の歴史を振り返る施設も誕生した。戦後二二八事件で兄の王育霖氏が国民党政権に殺され、自身は日本に亡命し「台湾独立」運動に注力した台湾の言語学者、王育徳氏(1924~85)の記念館だ。昨年開館し、多くの参観者を集めている。
王は台南の出身。台湾の言語や歴史を研究する一方、1960年に雑誌『台湾青年』を日本語で発行し、独立運動に影響を与えた。
記念館は台南市の中央部「呉園」という公園内の施設を改装した場所にある。ここは私が台南で初めて講演を行なった茶藝館「十八卯茶屋」がある思い出の場所だ。記念館では都内の自宅の書斎を移設したほか、原稿や身の回りの品など約300点を展示していて、その豊富さに驚く。独立運動や台湾語、王育徳さんの生涯を描いた部分など展示は多彩で、最低でも30分以上かけて見学したい。
ここ数年の台南観光ブームに伴って、台南の地価は著しく上昇した。古くからの店舗は家賃の上昇に耐えきれずに立ち退き、代わりにチェーン店や大型店舗が進出することが急激に増えている。古い建物を残していても、本来の魅力が伝わりにくくなっているケースも少なくない。台南ファンの一部からは急激な変化や文化の喪失を心配する声も多い。元に戻すのには想像以上の時間が必要だ。そして、元に戻せるとも限らない。
幸い台南では台南市美術館をランドマークに、街全体に新しい風が吹いている。台南が新旧文化の共存するお手本の街として、市民と一緒に成長する様子を、これからも台南市親善大使として一緒に支えながら、見守っていきたい。
バナー写真=台湾特集が組まれている雑誌(筆者撮影)
