文学賞が星の数ほどある台湾
日本で小説家デビューした時、担当編集者に「台湾でも文学賞を取ったことがある」と言ったら、すぐさま「では台湾でもデビューしているのか?」と聞かれた。「文学賞を取ったがデビューはしなかった」というのは、どうやらなかなか理解しづらいことらしい。
しかし台湾ではそれは極めて当然のことである。というのも、台湾では文学賞は星の数ほどあるし、その形式も意味合いも日本とはだいぶ違うのだ。
台湾の文学賞は大きく「学生文学賞」「地方文学賞」「全国的な文学賞」に大別できる。「学生文学賞」は学生しか応募できない賞で、主催者は高校の文芸サークルや、大学の文学部が多い。その場合、その学校の学生しか応募できないようなケースがほとんどで、いわば「文学創作の習慣を広める」ことが主な目的である。文学雑誌の出版社や企業が主催するケースもある。その場合は一校のみならず、学生であれば誰でも応募できる。学生文学賞の中で比較的に有名なのは、台湾大学主催の「台湾大学文学賞」(台湾大学の学生のみ応募可)、明道文芸雑誌社主催の「グローバル華文学生文学賞」(中国語で創作する中高生であれば国籍問わず誰でも応募可)や、半導体メーカーのTSMCと新聞社の聯合報が共催する「台積電青年学生文学賞」(台湾籍の高校生のみ応募可)などがある。
「地方文学賞」は地方政府が主催する賞のことで、多くの場合、その地域に居住または通学・通勤したことがあること、またはその地域の文化を描くことが応募の条件となっている。比較的に有名なのは台北市主催の「台北文学賞」や台中市主催の「台中文学賞」などである。
「全国的な文学賞」は読んで字のごとく、誰でも応募できる文学賞のことである。台湾の三大紙主催の文学賞(中国時報「時報文学賞」、自由時報「林栄三文学賞」、聯合報「聯合報文学賞」)や、聯合文学雑誌社主催の「聯合文学小説新人賞」が代表的なものである。もっとも、三大紙文学賞のうち現存するのは「林栄三文学賞」のみで、「聯合文学小説新人賞」も2014年に開催停止となった。
文学賞の数が多いだけではない。大抵の文学賞は短編小説(ほとんどが1万字以内)や、エッセー、掌編小説、現代詩部門なども設けられている。各部門の応募作品数は数十作から数百作に上り、その中から1位、2位、3位と佳作3名、計6名(あるいはそれ以上)の受賞者が選出される。つまり、1回の文学賞において受賞者は20数人もいるわけだ。
文学賞の数も、受賞者の数も多い。文学創作に興味があり、応募し続ける人なら、大抵の人は1回は受賞できそうなものだ。受賞者がインフレしているのだから「文学賞受賞=作家デビュー」という図式は成立しない。「これを取ればデビューできる」という公募文学賞も存在しない。だから作家志望者はまとまった分量の「会心の一作」ではなく、短い作品を何作も何作も書いては応募しなければならない。何度も受賞者リストに載ったらそのうち出版社から「本を出しませんか」と声がかかることを夢見ているのだ。私自身、レベルを問わないなら30回くらいは受賞したが、デビューには至らなかった。
