上昇傾向にある人件費

次に人件費を見てみる。特に人件費の部分で多くの企業が想定通りにいかないようである。現在台湾の最低賃金は月給で2万3100元(約7万7000円)、時給で150元(約500円)である。この数字だけ見れば日本より人件費は安く見えるが、最低賃金は毎年3~5%上がると想定しておく必要がある。なお8月14日に発表された来年の最低賃金は月給が3.03%アップの2万3800元、時給は5.3%アップの158元で2017年からの上昇率は月給が18.95%、時給はなんと31.67%である。

少子化が進む台湾、特に台北では日本と同じく人手不足が激しく飲食業では、3万元では簡単には人は集まらないどころか応募すら期待できない。飲食業経験者、まして日本語ができるスタッフを雇いたければ4万元は出さないと良い人材は採用できない。日本の飲食店はアルバイトを中心とした運営で人件費を抑制しているが、台湾で安定してアルバイトスタッフを集めるのは日本よりはるかに難しく、人材の流動性も非常に高い。

また、台湾ではアルバイトを祝祭日勤務させた場合、2倍の時給を支払う義務がある。もちろんこれ以外にも正社員、アルバイトを問わず健康保険、労働保険、退職金基金の会社負担がある。これは給料の2割程度の負担を想定しておく必要がある。つまり3万元のスタッフを雇用する場合、会社は毎月3万6000元を準備しなければならないということである。

残業時間数についても今年に入って若干緩和されたが、3カ月で138時間以内、1カ月で最高54時間までという規制がある。台湾の労働法は週休2日を定めているので、ここは、特に日本人経営者は注意が必要である。なお、労働法では店長や管理職も労働者であり日本のように管理職手当を支払うことで残業規制外とはできない。

残業も少しなら大丈夫などと甘い考えで労働時間を超過させたり、サービス残業をさせたりすると、すぐに労工局(日本の労働基準監督署に相当)が調査に入る可能性が高いと考えておくべきである。罰金も2万元から最高100万元と非常に高額で、調査が入った場合、罰金を科される可能性は非常に高い。なお、数年前にオープンした日系アウトレットモール内の日系お好み焼き店がオープン後数週間で労工局の調査を受けた。オープン後とても忙しくスタッフに休憩時間や休日を与えず働かせたという問題であった。

これはスタッフによるマスコミへの通報で発覚した問題だが、台湾ではこうした甘えは許されず非常に厳しく罰せられる。スタッフによるマスコミへの情報提供は日本よりはるかに簡単に行われるため、メディア対策も含めた労働管理が必須となる。

大きな問題となるのは日本人がこうした問題に直面した際には、優秀な通訳者がいない限り、当局とのコミュニケーションを円滑に行うのは至難の業であるということである。当局に対し言葉ができないという言い訳は許されない。公文書等もすべて中国語である。資金力が豊富な企業であれば日本語のできる顧問弁護士や通訳スタッフを備えておくことも可能だろうが、こうした費用負担は決して小さなものではない。