まだら色の食材コスト

日本に比べ物価が安いといわれる台湾だが、食材に関していえば安いもの、高いもの、あまり変わらないものがある。例えば乳製品は日本のほうが安く、小麦粉は台湾のほうが安い。しかし、こだわりの食材として日本から輸入する物は運送及び関税のコストが上乗せされるので、コストは跳ね上がる。全体的に見ると台湾の食材調達コストは日本より若干安い程度という認識でよいだろう。しかし、日本のように種類や調味料、加工品が充実していないため、自社で製造調理する品目が増える可能性があり、その分はどうしても人件費の負担が上がる。衛生署による抜き打ちの衛生検査もあり、店舗内での食材の保管体制には気をつけなければならない。万が一、店舗内に賞味期限が切れている食材が発見された場合には、いかなる理由であろうと罰金の対象となる。

一方、電気、ガス、水道等の光熱費については日本より安いのは間違いない。日本の半分程度で予算を組めばほぼ問題ないだろう。その他、飲食店であれば公共意外保険、火災保険、産品責任保険への加入義務がある。規模や面積にもよるが、費用は3つの保険で1年1万元弱と考えていればよいだろう。防犯セキュリティーを契約する場合、こちらも規模とサービス内容によるが、基本的なもので1カ月1500~2500元が相場である。

ここまで経営にかかるコストを見てきたが、総じていえば、日本より経営コストが特別低いということはなく、逆に中国語対応にかかる時間や人件費が発生し、チェーン店であれば日本国内では可能な「規模のメリット」を生かすこともできない。そうした様々なコスト等を考慮すると台湾進出は決して楽なビジネスではない。

冒頭に紹介した台湾撤退を発表したラーメンチェーン店のうち2つのブランドは短期間に複数店舗を出店し、一時は台湾全国にまで拡大していた。なぜならば、これまで見てきて分かる通り、1店舗のみでは経営コストが圧倒的に高くつき、利益を出すのは難しく、複数店舗を経営し規模のメリットを生かし利益を出さなければならなかったからだろう。しかし言葉や文化が違うスタッフを短期間で会社幹部に育て、しかも厳しい労働規制と人材の流動性が非常に高い文化の中で、短期間で広範囲に店舗を拡大していくのは簡単なことではないのである。

バナー写真=2017年の開店直後に長い行列ができた台北一蘭店。2019年現在も人気は高く、台湾からは撤退していない(野嶋剛撮影)