中国語を用いて日本を観察する「野党」的存在
2017年に新井氏は台湾で『我和中文談戀愛(私は中国語に恋をする)』を出版した。新井氏は著書の扉に手書きでこう記している。「中文好聽,好看,好玩,好寬容(中国語は音がきれいで、見た目もよく、面白い、そしてとても寬容だ)」。以前、新井氏は、中国語を以下のように形容していた。「中国語を話すと胸が高鳴り、まるで初恋のようなときめきがある、特に美しいのは音で、聞くだけで感動するほど美しい、それはまるで歌のよう。中国語で文章を描くときは私ではない誰かになれるようなのです」
ある年、新井氏はシンガポールで中国語の普及についての講演をした。ステージの下でその様子を見ていた荘培園氏は、ふとこう思ったそうだ。「そうだった。彼女は日本人だ。日本人である彼女が中華系の人たちにどうやって中国語を愛すべきかを教えているんだ!」長年、新井氏と共に仕事をしてきた荘氏は、対面でも筆談であっても新井氏の答えがとても的確であることをよく知っている。また、電話インタビューの際には、新井氏のヒアリング力の高さをひしひしと感じているのだそうだ。
「新井さんの文章は基本的に修正する必要がありません。(日本人である)新井さんが台湾で出版することは、ウサギと亀が一緒にレースをするようなものだと思います。台湾では1~2冊の話題作であっという間にベストセラー作家となり、いつの間にか消えゆく人もいますが、新井さんはゆっくりだけど堅実に前に進む亀の方です。しかも新井さんは書くのが速い。仕事は速く、ゆっくりと進む亀ですね」
荘培園氏は、そんな新井さんのことを一般的な日本人とは違うと感じているそうだ。新井氏が中国語で日本を観察する姿は、例えるなら「野党」に近いのだという。新井氏は日本で台湾の映画をテーマにした著書を出版し、明治大学の中国語圏映画の授業も担当している。
