高度な感染対策と人権

台湾で厳しい隔離規定が導入された2020年2月から1年がたとうとしている。台湾は過去のSARSの教訓から、「料敵従寛、禦敵従厳(=敵情を侮らず、より厳しく敵に立ち向かう)」という方針でコロナ対策に当たってきた。実際に現地で感じたのは、「どんな小さな症状でも絶対に見逃さない」という台湾政府の断固たる覚悟だった。

筆者の兄が今年の1月に日本から台湾に戻った際、申告書に「2週間以内にお腹をこわしたことがある」と正直に記入したら、即病院送りとなり、PCR検査を受けるはめになった。さらにその後2日間は検疫所に留め置かれた。

どんな小さな症状でも、まずは検疫所に運ばれて、再びPCR検査を受ける。写真は検疫所の様子。(筆者提供)
どんな小さな症状でも検疫所に連れていかれ、PCR検査を受けなければならない。写真は検疫所の様子。(筆者提供)

検疫所の生活は軍隊のようなものだ。毎朝7時半にアナウンスがあり、朝食はドアの前に置かれる。1日の生活は規則正しく、部屋を回る医療スタッフは全員が防護服を着ていたという。その後2回のPCR検査で陰性が確認されて、ようやく兄は検疫所から放免され、次の隔離先であるホテルに移動した。

多くの国が14日間の在宅隔離政策を採用しているが、ここまで厳しい基準を設けたのは台湾が世界で最初だった。当初は、台湾でも「厳しすぎる」との議論も起こったが、結果的には台湾方式は成功をおさめ、多くの国や地域が見習おうとしている。

外国から帰国した台湾人は14日間の隔離措置を多かれ少なかれ不便に感じている。“台商“と呼ばれる海外で活躍する企業家からは、実際に抗議の声も上がった。しかし、大部分の人は、感染拡大防止のためには、不便もやむを得ないと考えているのだ。

その一方で、海外からの入国者や医療スタッフに感染者が出ると過剰反応して、帰国者に対して「ウイルスを持ち込んだのではないか」と偏見を持つ人もいる。誰だって感染はしたくないが、台湾社会はすぐに動揺する傾向があり、その日の感染者数の状況が政治的に攻防に発展することもある。そのあたりは冷静な日本人とは全く異なるところだ。