宮出し:最大の見せ場で出す男気
恩田さんの行動力が際立ったのが、三社祭、最大の見せ場とも言われる宮出しのとき(参照/「宮出し」)。5月20日午前6時。約3000人の担ぎ手が、宮出しの始まる瞬間を待ち構えている。その喧噪はすさまじく、南部16ヵ町会が受け持つ三之宮を無事に出発させるには、誰かが神輿に上がって馬道(神輿を置いておく台を撤去するための道)を作る指示を出すしかない……。その大役を引き受けたのが恩田さんだった。
「みんなと同じ目線から合図しても分からない。思えば、青年会の会長職を引き受けたときと同じスタンスだったかもしれない。どうせ誰かがやらなきゃいけないことなら、やる気のある人が引き受けて、必死にやったほうが結果はいいはず」
かつては誰もが競い合って、体を張って神輿の上に乗ぼろうとした。乗ることが男の、祭り好きの証でもあった。しかし、平成18年(2006年)、15人もの男の重さに耐えきれず、バランスを崩した神輿が落下。堅い樫(かし)で作られた横棒が折れるという事故が発生した。以来、神輿に乗ることは厳しく制限されている。ただし神輿が台に載っているときは、合図や儀式などのため、定められた人が乗ることが許されている。
「宮出しで神輿に乗れ、本当に感激しました。誰が乗るかも決まってなかったし、3000人以上もの担ぎ手が今か今かと殺気立つ中で合図を待っているときに神輿に乗れましたから。決して大げさではなく、本当に神様に近づけたような気がしました」
大役をこなした後は、また来年も無事に三社祭が執り行われるようにと最後尾から見守り、サポートする。その周囲を、指示に従う若衆たちが掃除やゴミ拾いをしていく。浅草寺の本堂前を通るころ、担ぎ手たちの発するエネルギーは頂点に達し、祭りはひとつのクライマックスを迎えた。

