絶え間ない美の探究が生んだ日仏の交流
5つのパートのうち、「時間」とは、季節や祝祭事、茶道の儀式といった日本の伝統や、日常生活のリズムに、時間が重要な役割を与えているという観点による。ここでは茶道の道具や祝祭行事の衣装など、主に日本美術を紹介。さらに日本の信仰にも触れ、仏像や狛犬の像も展示している。
「動き」のパートでは、「移動」の手段である駕籠(かご)や、相撲、演劇、舞踏といった身体の「運動」に関わる衣装や仮面を取り上げる。またそれらの一瞬の躍動感を見事に描いた日本画、力強い筆の勢いを感じさせる書道など、西洋人が魅了された作品と、西洋の作品が並置されている。たとえば歌舞伎のようなメイクで一世を風靡した道化師ジョルジュ・フティットのポスターは、当時のジャポニスムの流行を表していると言えるだろう。
展示の最後を締めくくるのは、現代の工芸品や田中一光のグラフィックデザイン、ファッションに注目した「革新」のコーナーだ。ファッションでは日本的な審美眼で西洋の洋服の常識に衝撃を与えたヨウジヤマモト、コム デ ギャルソン、イッセイミヤケらを紹介。とくにイッセイミヤケは、田中一光とのコラボレーションによるプリーツプリーズのNIHON BUYOシリーズと、再生ポリエステルを用いて伝統的な書や水墨画へオマージュを捧げたBOKUGI LINENシリーズを展示し、日本的な美意識と高度な技術の融合を表現する。
現代工芸品のコーナーでは、日本の陶磁器や漆器など伝統技術の分野における絶え間ない技術開発が、西洋の作家にも応用された例を紹介。日本と縁の深かったシャルロット・ペリアンの作品も展示され、日仏アーティストの交流を浮き彫りにする。グローバル化の中で、技術開発や他分野とのコラボレーションに力を入れることで、日本の伝統技術を誇る老舗が生き残ろうとする例も刺激的だ。
加えて本展では、2017年に東京国立博物館で開催された「フランス人間国宝展(*1)」のキュレーションに触発され、7人のフランス人アーティストに制作を依頼したオリジナルの作品も展示している。
ケットさんは今回の展覧会を通して、日本とフランスの共通性についてこうまとめる。
「日常生活に宿る美意識、芸術、例えばシンプルな物の美しさを評価する姿勢は共通していると思います。おそらくフランス人よりは日本人の方がそうした感覚が鋭く、繊細なのではないでしょうか。技術革新を用いてそれをさらに発展させていく点も、西洋のアーティストにとって魅力的であり、ことさらインスパイアされるゆえんでもあるのです」
日本美術ならではの美意識と、その影響を受けて生まれたジャポニスムの対比は、鑑賞者にとっても、新たな見識をもたらしてくれるはずだ。本展は、パリ装飾美術館(107, rue de Rivoli 75001 Paris)にて2019年3月3日まで開催。
取材・文=佐藤 久理子写真=澤田 博之
(*1) ^ 日本の人間国宝にならってフランス文化省が1994年に創設したメートル・ダール(Maître d'Art=名匠)。その認定を受けた13人の作家を中心に紹介した世界初の展覧会が、2017年9月12日から2017年11月26日にかけて東京国立博物館で開催された。







