日本は「尊重」するも、「承認」はせず
野嶋 日本政府の「一つの中国」への対応は、米国とまた微妙に違っていますね。
池田 日本はサンフランシスコ条約でポツダム宣言にのっとり、台湾を含めた旧植民地をすべて放棄し、それらが現在どこに帰属するのかについては言及しないという立場です。その上で、1972年の日中共同声明で「台湾は中国の不可分の一部である」という中国の主張を「十分理解し、尊重する」としました。中国側にかなり歩み寄った政治的な表現ではありますが、これも、中国の主張への法的な承認や合意ではありません。にもかかわらず、中国側は意図的に「日本は台湾を中国の一部だと認めている」と断定的に説明しているので、混乱する人もいるはずです。
欧州各国は多くが中国の主張を「テイクノート(留意)する」としています。これは「知っています」「分かっています」ということで、自分たちがそれに対してどう思っているかは言及していません。欧州は地理的に遠く、中国も厳格さを求めなかったのでしょう。一方、日本、米国と台湾との関係は重要なので、かなりシビアな交渉がありました。米国が「acknowledge」を受け入れたのは、対ソ問題で米中が接近し、台湾の蒋介石政権自身も自分たちは中国全体を支配する権利があると主張し、当時は台湾に住む住民たちをすべて「中国人である」との前提で統治していた事情があります。
いずれにせよ、日本と米国、欧州すべて合わせてみても、「台湾は中国の一部である」という中国の「原則」を承認しておらず、中国との主張には乖離(かいり)があります。かように「一つの中国」というのは、非常に曖昧な概念なのです。